三二0窟では,このような位置には同じ類型の図が配置されている。別表lでは,各壁画の「(4)類型」欄において,同種のトーンが貼られた箇所(例えば「画面中の位置J「左下」と「右下」は同種のトーン,「左中jと「右中」は同種のトーン)には,同じ類型の図が配置されることになり全体として左右相称の画面構成になる。第三に画面の下方にはI型が置かれ視点が高く,画面の上方にはE型が配置され視点が低くなるということである(注16)。別表lでは,(横軸の第一行自)中軸線の向かつて左側では,(横軸の第三行目)「左下」よりも「左上」にはより大きな数字の類型のものが配置されることになる(横軸第二行自の矢印)。初唐期の各壁画において,これらのこつの規則性は確立しているかどうか。これが第四のポイントである。四,考察(→ 第三二九窟と第三三一窟の共通性次に初唐期の作例の分析に移りたい。筆者の実地調査の結果と写真資料によって補った情報を別表lに示した(注17)。特に第三三一窟南壁,第三四一窟南・北壁など,別表lに星印を付した資料は,写真資料が公開されていないため,実地調査によって初めて情報を得ることができた。この表の縦軸の左から二列目には上記の分析ポイントの各項目を示し,横軸の第三行目には各図が配置される画面上の位置〔図4にも図示〕を示した。そして各図に番号を与え,「資料番号」欄に示した。この表によって,初唐期窟群の中で,第三二九窟と第三三一窟の宝楼閣図〔資料番号1から20〕には,共通の技術的傾向が見られることが分かる。すなわち,分析の第一のポイント(向かい合う面の高欄架木が互いに平行に表されているか)を見ると,例外なく全く平行ではない(別表lの「(1)架木」欄には,20度以上の角度で斜交する場合に「不平行」と記した)〔図5のabとcdは平行ではない〕。そして,この両窟以外の洞窟の壁画のうち平行でないのは,第二二0窟南壁〔資料番号21・22〕だけである。第二のポイント(奥行き方向の線の斜度)を見ると,この両窟の資料の大部分が水平に近い〔資料番号1から20の「(2)斜度j欄,図6〕。そして,この両窟以外の洞窟の壁画のうち,やはり水平に近いのは,第二二0窟南壁の作例〔資料番号21・22〕と,その他わずか二例のみとなっている。そして,奥行き方向の線があまりに水平に近いため,先に示した三つの類型には納まりきらないものが多数あることも,この両窟に共通する特徴である。例えば,第三-345-
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