(常材、寺本では,画像の中に六字名号を大書),後世,画像だけでなく彫像も一遍像と真教像が対で制作されている例が多い。また,遺例の中に同一画面に二人を向い合わせに描くものもある。称念寺(福井)蔵重要文化財現存最古の真教像。画面向って右を向き,胸前で指先を斜め下に向けて合掌し,上畳の上に素足で立つ姿にあらわされる。手の先は不明瞭で、,合掌のみなのか,念仏札を挟み持っかどうかは不明。顔は,傷みのためにはっきりせず,細い墨線で輪郭をとり眉・目・口の一部がかろうじて確認できる。着衣は阿弥衣ではなく,墨染の法衣の上に鼠色の地に白の日繋文の会をはおる。衣文線は,肥痩のない均一な太さの線を用いており,一部にぼかしが施されている。上畳は,高麗縁で,その縁には薄等の秋草が細い墨線で描かれている。画面右上に六字名号が,同じく左上に和歌が金泥で書かれている。和歌は,「老らくのあとをむなしとゆふっく日やまのはちかく影そかたふく」。『他阿上人和歌集J所収の「筒の御影Jと同じ和歌で,筒の御影の系統を51く画像とも考えられている。画面の周囲には緑青で枠をめぐらす。清浄光寺(神奈川)蔵〔図5〕いのが惜しまれる。肌は黄褐色で,肉身線は非常に細い均一な線を用いている。眉は細い線を重ねてあらわし,一部のみ見える口は,口角が下がっているのが判別できる。中風を患った真教の特徴を示すものであろう。ふっくらとした顔立ち,手足であらわされ,一遍像と好対照を成す。(6)の称念寺本より前屈みとなっている。衣文線は,均一な太さの線を用いているが,後補の可能性がある。衣線の片側にはぼかしを入れている。上畳は,(6)が画面左右縁を横切るように配されるのに対し,本図は向ってやや左側に配される。向って左上には六字名号を墨書し,左上には丹地と緑地の二色の色紙型を配して偏墳を墨書する。丹地は「願力道不嫌余念西方信無有雑乱名号外不求臨終材、念内即遂往生」だが,向って左は判読不能。金蓮寺(京都)蔵未調査(6)他阿上人真教画像l幅鎌倉時代絹本著色縦80.3cm横41.5cm (7)他阿上人真教画像l幅室町時代絹本著色縦90.Ocm横38.5cm (1)とほぼ同じ像容の真教像。本図も,顔の部分の絹地が傷み,表情がよく分からな(8)一遍上人・他阿上人真教画像l幅南北朝時代絹本著色縦51.7cm横41.0cm364
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