くJの和歌が記されるが,緑青地のほうは傷みが激しくて第三行の「名号」の文字と南無阿弥陀仏の六字名号を中央に,向って右に一遍を,同じく左に真教を描く。一遍は,向って斜め左を向き,手に念仏札を挟み持ち数珠を手にする。斜め上方を見つめ,口を開けて念仏を唱え,阿弥衣の上に袈裟を着し,素足で前かがみになる通例の一遍像である。真教は,少しうつむき加減で,向って斜め右を向き,首から鉦架をつるして鉦鼓を打つ姿に描かれる。一遍同様,阿弥衣の上に袈裟を着し,素足で片足を前に踏み出している。画面中央,蓮台の上に大書される六字名号は,一遍流の真の名号と称されるものである。(9)一遍上人・他阿上人真教画像l幅桃山時代紙本著色縦61.7cm横30.7cm 個人蔵一遍と真教の定型化の様式を知る格好の作品。六字名号を中心に,向って右に一遍を,左に真教を配する。一遍は阿弥衣を着し上を向いて念仏を唱え,手には念仏札を扶み持つ。足は素足で右足を前に踏み出す。(1)の神奈川県立歴史博物館本と(2)の清浄光寺本に通じる像である。一方真教は,会をはおり合掌して立つ姿で,材、念寺や清浄光寺本に通じる像である。一遍も,真教と同様上畳の上に立つのは,上畳に立つ真教像との整合性を考えてのことであろう。中世に遡る一遍や真教の画像は少ないが,現存する中世の画像と同様の図様で連綿と描き続けられたことが推測される。高宮寺(滋賀)蔵滋賀県指定文化財〔図6〕本作品は,真教の単独像ではなく,色々な要素が盛り込まれており,きわめて特異な図様を示す作品である。中央向って左に,浄土の宝池から生じた蓮華上で阿弥衣と袈裟を着して合掌する他阿真教,その足元には十二光箱,向って右には金泥で大書された六字名号を配する。真教の上部には,二色の色紙形を配して和歌などを記している。向って左の丹地の色寿氏形には,「九しなにわかるるはなの上にてれひとつほとけのみのりとはと「修一jの文字がわずかに判別できるのみである。恐らく清浄光寺本などに見られるように,漢文体の仏を称賛する偶墳が記されていたのであろう。『他阿上人和歌集』には残念ながら「九しなに…」の和歌は収められておらず,これが他阿上人の和歌かどうか現時点では断定はできない。蓮の上で合掌する僧は,顔面右半分がゆがんでいることから,真教であることは明(10)他阿上人真教画像1幅南北朝〜室町時代絹本著色縦125.5cm横41.6cm -365-
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