鹿島美術研究 年報第16号別冊(1999)
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⑫ 江戸時代後期京都画壇における基礎的研究研究者:大津市歴史博物館学芸員横谷賢一郎本稿における江戸時代後期京都画壇とは,期間にして寛政年聞から文政年間までの範囲を扱う。この時期の京都画壇の様相については,平成10年10月に京都府京都文化博物館が主催した展覧会「京の絵師は百花練乱Jで紹介され,観覧された研究者諸兄も少なくないと思われる。観覧の結果,この時期の京都画壇をどう評価するかは意見の別れるところであろうが,関心自体が高められ,この領域での研究が進展することを期待したい。さて,本稿では,その江戸時代後期の京都画壇に関する人名録・書画展観目録・諸家寄合物・絵本(絵入り版本)などを画壇資料としてとりあげ,それらを相互に関連づけて画人の確認と比較を行ってゆくものである。上記の資料を画壇資料として取り上げる理由は,主に二つある。①:〈主に人名録・書画展観目録と諸家寄合物の一部〉規模の大小こそあれ,いずれも,特定の時期や地域の絵画状勢を反映した画人リストとしての,もしくはグルービングとしての資料価値がみとめられるものであるため。②:〈主に書画展観目録・諸家寄合物・絵本〉展観・寄合描き・絵入り版本にみる画人名を確認してゆくと,各画人の累計にはかなりの格差が認められる。すなわち常連である画人とそうでもない画人にわけることができる。現代におけるそれらの画人への認識とはかかわりなく,当時の実績による各画人の活躍状況が示されるため。ただし,各資料における,それら上記の情報は,必ずしも客観的に扱え,判断できるものではなく,一元的な基準で各々を比較するのは困難である。本稿でも,筆者の経験則による臆断を加味してしまうことをお許しいただきたい。とにかく,本稿では多角的に資料をつきあわせ,江戸時代後期の京都画壇における横断的なリストアップをすることが目的である。その作業にあたっては,便宜的に,寛政〜享和年間・文化年間・文政年間の3期区分を設けてみた。むろん,このリストアップが草稿であることはいうまでもない。紙数の都合もあり,資料を最大限に有効活用することはもとより不可能であったが,その雛型としての意義はあろうかと思う。401

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