鹿島美術研究 年報第16号別冊(1999)
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の5点ばかりは,唐紙の両面に墨画される。以下,画面を表とするが,小さく折りた(8)その他制作事情や完成画の品質・形状・す法などが記されている。たまれた料紙の最後の裏面には,表題的に,文字の情報が記される。〔図l〕すべての資料に文字情報がある訳ではないが,約9割には何らかの書込みがある。その内容は資料によってまちまちで,統ーがはかられてはいないが,(1)元号・干支・月日,(2)画題,(3)「所図jと表現されるところの恐らく完成画の筆者,(4)模写者,(5)絵画制作の依頼者,(6)紹介者,(7)「虎頭館蔵J.「同功館蔵」(注3)など岸派の工房に架蔵の表示,表面にも絵画以外に文字が書き込まれることがある。色注,款記の写し,印章の位置,賛文の写し,障扉画の方位や位置関係,「俵ノクマ淡ク致スベシ」「足大キ過キル心得ヘシjなどの注意書き,など,内容はさまざまで一定はしていない。裏面には,先の表題以外にも,2割弱程度に「虎頭館図書記」「同功館」などの印章が捺される。また,9割程の資料には,縦4.6cm横l.5cmの小さな短尺形の紙片が貼付されている。短尺の書込みは「天山水拾五j「紫人物三拾四共拾jのように符丁・主題・番号・関連資料の枚数とならび,符丁には天・紫・御下絵・草稿,主題には山水・人物・雑の別があるが,御下絵と草稿には主題による分類は無い。そして,符丁ごとに,短尺の輪郭が水色・褐色・黄色・草色で固まれている。以上が本資料の形態的な概要である。金田家から初めてこの資料を一括して拝借し,調査に着手した時点では,全く整理がついておらず混乱した状態で行李に納められていたが,まずは一枚一枚を整理番号を付けながらとりあえず撮影し,その後に,短尺の書き込みを参考にしながら,複数の枚数で一組となっているものをまとめ,紙継ぎが外れ分離している料紙を旧に復し,それぞれの資料の仮番号を付した。そして,(1)時代の書き込みがあるものは時代順とする。(2)年記はないが短尺形の整理札が貼付された資料は「天雑J「天山水」「天人物」「紫人物」「紫雑j「御下絵」「草稿jの順に分類してそれぞれの短尺に記入された番号の順とする。(3)年記・短尺とも無い資料についてはスケッチ的なものを後半へまわし適宜配置する。という原則にしたがって資料全体を整理してみたのが,付表「岸派絵画資料目録(稿)Jである。資料の総量は,538枚,資料件数としては437件となった。この整理法は,異なる三方向の観点から全体を整理しているので,同様の性格をもった絵を別々の場所に配置している場合もあり,かならずしも最適の方法ではなく,今後各個の資料をくわしく検討した上で,より適切な目録を編集したいと考えている。419

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