鹿島美術研究 年報第16号別冊(1999)
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注(1)富山市郷土博物館岸駒と岸派展1984年き若年者が15歳あたりから始め,比較的若いうちに次世代に譲ってゆく作業と考えられ,絵画制作の基礎的な練習と考えられていた可能性もある。おわりに以上,岸派本家に伝来し,先年,富山佐藤美術館に寄贈された,岸派絵画資料の概要を簡単に紹介した。これだけまとまった資料が,分散せずにほぼ伝来のままの姿で当館の蔵となったことは幸いであった。しかし,過去に分類整理され,短尺が貼付された時点において,すでに一部が失われており,短尺の整理番号が連続していないことからも,推測できるように,これ以後にやはり滅失した資料がかなりの数あったと思われる。そのため,当館に託された本資料のみで,岸派の粉本を語ることはできないかも知れないが,ここに紹介した400件以上の資料は,岸派粉本のー側面を示すものであろう。中心的部分は,岸駒・岸岱時代に作成された模写で,寛政から文久にかけて,ほぼ間断なく続いている。原本は完成度の高い下絵のようなものかあるいは,完成絵画そのものの可能性も考えられ,完成絵画を想定するに足る模本として,本資料の価値は低いものではないとおもわれる。現在のところ,ようやく資料整理を終えた段階ではあるが,今後は,他の系統の岸派絵画資料との比較検討や,表題部分の記載による,岸派絵画の受容者の調査などの方面から岸派を検討することも重要な課題である。岸派絵画研究の基礎資料を整備する上でも,今後も翻刻の校訂を再検討して,近い将来に,図版をともなった資料を編集・刊行し,本資料を広く提供し,岸派研究に少しでも益することを願っている。小布施町『鴻山知友肉筆画集J1988年岐阜県博物館三尾暁峰とその門下生の作品展1990年付知町『郷土の生んだ画人三尾暁峰の作品とその生涯」栗東歴史民俗博物館『岸派とその粉本山中東江絵画資料を中心に.l 1994年栗東歴史民俗博物館『岸派とその系譜岸派から岸竹堂へ』1996年岐阜県博物館『花と鳥のイリュージョン一江戸の学問と芸術一』1997年426

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