Y王(1)荒川正明「大皿の時代J『出光美術館紀要第二号J1996年出光美術館また,別表No.219の遊廓の料理は卓にのせられている。卓には朱塗の大蓋物と鉢,大皿に猪口が描かれている。このころの宴席の場面にはこのような卓が描かれている。組み合わせは上記のとおりで,加えて取り皿としたであろう小皿も重積みされているのがみられる。この組あわせはほとんど定型であったのか,19世紀の多くの宴席場面に描かれている。おわりに以上,近世風俗画と陶磁器について概観していったが,まとめるべき情報量が多く,細かい分析が追いつかなかった。今回,絵画資料を多数扱って描かれている陶磁器についての情報を引き出す作業を試みたが,予想以上に絵画資料が陶磁器使用の場について多くの情報を提供するものであるということがわかった。一方で,陶磁器は,描かれているものと描かれていないものの偏りが大きいことも気がつかされた。例えば,陶磁器が使用されていた可能性が高い日常の食膳風景は,期待していたにもかかわらず見られなかった。これは,当時の人々にとって,日常の食膳は描かれるべき対象とみなされていなかったからであろう。今回の助成を受け,情報収集に努めたところ,予想以上の情報量ではあったものの,不十分な集積である感が否めない。別表にまとめた絵画資料のデータをさらに充実させ,陶磁器研究の一助となることを望む。荒川氏はこの論考の中で,大皿が近世の大名屋敷に顕在することと,絵画資料とに着目し「饗宴jの場における大皿の機能について考察している。(2)仲野泰裕「文献・絵画史料にみる陶磁製品の動向一江戸時代中・後期を中心として−」『美濃の古陶3.I 1989年美濃古窯研究会仲野泰裕「江戸時代の瀬戸美濃窯における錆柚製品について絵画史料などを中心として−J『愛知県陶磁資料館研究紀要7.I 1988年愛知県陶磁資料館用途に関する考察とともに,仲野氏は,絵画資料を史料として陶磁器の形態変化を追い,編年研究を試みている。(3)『茶の湯絵画資料集成』1992年平凡社-498-
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