ABCを使用している。右から，身体が正面向きで顔は左向きの有翼裸体女神，両手を能性もあり狩猟に関わる存在であるらしい。副次的なモチーフとしては，スフインクス，有翼獣，ライオンや正面向きの鷲などの動物がある。これにギローシュとよばれるねじれた糸束のような装飾文が図柄の上下を縁取ったり，スフインクスや動物などを上下2段に小さく配する文様枠の中央分離帯に見受けられる。ギローシュの上下に小モチーフを組み合わせた枠状のデザインはシリア様式の特徴のひとつであり，シリアからの影響であろう。とくに目をヲ｜くのがエマルを管轄統治しているカルケミシュのヒッタイト王族の一人，ヒシュミ・テシュプの円筒印章である〔図2〕。今回の中ではもっとも美しく精椴な出来映えの印章で，横長のテキスト3'29の2枚に捺されている。有翼円盤を戴く太陽女神と雷神，牡牛をヲ｜く男神を独特の手つきをした山岳神と［午男Jたちがそれぞ、れアトラスのように支えている。いかにもヒッタイト的な印章であり，第一級の宮廷印章職人の手によるものと思われる。・シロ・ミタンニ様式の円筒印章(19点）テル・アララフはエマルと同じくヒッタイトの管轄下で暮らしていたヤムハド王国の都市であった。とくに第町層（紀元前15世紀）ではシリア様式とミタンニ様式が混在したシロ・ミタンニ様式の印章が見受けられる（注10）。ミタンニ様式の印章のうちファイアンス製の庶民印章ではなく，エマルの印章は硬い石材にドリルを利用した比較的彫りの深い様式である。人物や神々が並ぶ構図でまず王朝印章（注5）〔図4〕がこのグループに含まれる。王朝印章とは，王家の人々の契約文書や布告文書，証人になった場合の文書にも捺された。縦長粘土板の短辺の側面に強く押し転がされており，中央が窪むほどである。文章を書く前に捺したと思われ，一目瞭然のレターヘッドであったようだ。王朝印章の存在はアララフなどでも知られ（注10），当時の北シリアにおける共通性がうかがえる。今回の資料の中では，王朝印章〔図4〕は同一モチーフ構成だが異なる3点の印章下げ右を向く長衣の人物，左手に枝のようなシンボルを持ち右手に棒を手に下げスリット入りスカートで右向きの人物，左手に弓を持ち右手に梶棒を下げスリット入りスカートで右を向く戦いの神が並ぶ。3点の王朝印章ABCは確かに王が関与している文エリと続く3代の名前が出てくる。ツ・アシュタルティ王の時印章Aを書記イムリク・書8点に使用された。文書にはエマル王としてツ・アシュタルテイ，ピルス・ダガン，525
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