珊瑚琉E自璃脳賓石lftE~吉田螺象牙犀角之類輿彩『五子類諸子農家小説家兵家天文家五行家医家芸術家類家叢書家』(弘前市立図書館)と題された目録のなかの,「小説家」の項に『方氏墨譜』の名を見いだすことができた〔図8〕。この目録の成立年代については,今後慎重な検討を要するが,目録には他に農学書,医学書,芸術書など858件もの漢籍について,書名,巻数,冊数,筆者などが記録されている。さらに『因子類儒家道家釈家』という目録には,328件の漢籍が掲載されている。これらの目録の存在は,かつて津軽家においても所蔵する漢籍を,中国の伝統的な四庫分類法により整理していた可能性を示している。現在では所在不明となっているものの,これら諸子百家をおさめた子類の他にも,経部,史部,集部などに分類された多くの漢籍が,ある一時期,津軽家に所蔵されていたと思われる。以上のように,津軽信寿の注文により制作された「柏木菟意匠料紙箱J,「春日野意匠硯箱jは,意匠構成や内部に納めらている文房具,年記形式などから,強い中国趣味を読みとることができる。また,文房具に対して徹底的にこだわる姿勢は,中国文人思想に影響を受けた可能性も指摘できょう。ここで,改めて「柏木菟意匠料紙箱j,「春日野意匠硯箱jに施された漆芸技法をみてみると,黒漆塗の地に高蒔絵,螺銅,鉛板など日本の伝統的技法が使われていることが確認できる。しかし,この作品の中心モチーフである木菟と鹿は,日本の伝統技法のなかには前例のない「やきものJによって表されている。筆者は,この表現が中国製漆器から着想、を得たものではないかと考えている。その中国製漆器とは,「紫檀翫玉石吉祥丈掛扉」(清時代)〔図9〕(注13),「百宝最花井方筆筒J(北京・故宮博物院蔵,明代末期)のような,明末から清朝にかけてさかんに制作された,具象的なモチーフを象牙や石や玉,螺銅などを最め込んで,立体的に表現するものである。両者とも,石やガラス,エナメル,象牙などの材料を用い,具象的モチーフを立体的に表現しており,絵画的というようりも,花瓶や花,小物など,表現しようとする「もの」そのものに迫ろうという意識が看取できる。このような細工は「百宝鼠jと呼ばれ,『髪飾録』(注14)には,「百賓最漆板子錯雑而錆刻接骨究者貴甚有隠起者有平頂者又近日加537
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