2-1 写生帖類の整理21. 5×13.5センチ13. 7×21. 7センチ(1)27.1×161. 8 (2)27. 1×121.8 (3)27.1×121. 0センチ2,安政4年の旅とスケッチ狩野勝川院に入門し,江戸でのおよそ10年の修行の後,30歳の芳崖は郷里長府に帰省する。安政4年の春であった。この,江戸から長府への旅行中に携帯した手控帳類が今日数点現存する。すでに東京芸大所蔵本3点については,関氏の資料紹介が行われている。今回これに加えることになる2点の資料は,平成5年に堺市博物館において開催された「近世の大阪画人山水・風景・名所」展に出品されているが,その内容が詳しく紹介される機会は今までなかったものである(注5)。そこで,当報告では芸大本について概略を示し,他2点は内容を一覧表のかたちで示した。「真景縮図」東京芸術大学大学美術館所蔵表紙に5月15日と17日の日付があるが,これはおそらく同年5月に整理した時のもので内容は日程表に示されるとおり2月末から3月上旬の甲州路,木曽路旅中の現場スケッチである。筆致は粗放とも感じられるが,山容をマッスで捉えつつ地平線をはっきりと意識した遠近法的感覚を示すスケッチであり,これを従来いわれるごとく「南画風Jと見ることは妥当で、はない。「真景図写巻j東京芸術大学大学美術館所蔵年記はないが,形状,筆致の類似性,内容の連続性から考えて「真景縮図」に続く安政4年の旅行スケッチと考えられる。前半が石山付近を中心に琵琶湖畔を描く。明らかに近江八景を念頭においている。後半は反対面より使用し,宇治万福寺での写生である。「嵐山淀川地取」東京芸術大学大学美術館所蔵「安政四丁巳三月京都見物jとあり,一連の安政4年の旅行中,大堰川,保津川,淀川と三河川の流れに沿って描いた作品であることがわかる。時間をかけた描写や彩色の状況から,すべてが現場でのスケッチとは考えにくい。逆に,嵐山や淀の水車など,他の写生に基づくのではないかと思われる描写も見られることから,記憶の新しいうちに作品化したとも考えられる。「雑画真景写」個人蔵紙本墨画和綴・22紙紙本墨画和綴.22紙紙本墨画淡彩巻子装-582-
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