⑫ 請来仏画の受容について(1)観経序分義図ー幅江南市・蔓陀羅寺蔵(3)阿弥陀三尊像一幅津島市・宝寿院蔵研究者:徳川美術館副館長山本泰一はじめに愛知県下の寺院に所蔵されている本邦制作の中世仏画のなかに,中国や朝鮮で制作された仏画に図像の典拠を求めたと考えられる作品が何点か存在する。今回検討の対象としたのは,次の三点である。絹本着色一副ー鋪104.9×51.4cm (2)阿弥陀如来立像ー幅音羽町・正法寺蔵絹本着色一副ー鋪99.5×38.7cm 絹本着色一副ー鋪82.9×39.4cmこれらの作品と図像ないしは主題を同じくする請来仏画を採り上げ,表現法,描写技法などを中心に比較検討し我が国における請来仏画を受容する態様について考察したい。l,観経序分義図蔓陀羅寺蔵〔図l〕『観無量寿経』の序章にあたる序分義に説かれる「阿閤世太子物語jより一部分を取り出し,三つの場面にわけで,図示している。すなわち,画面の下半分は,父王を幽閉するような悪逆の子,阿闇世を持った母,章提希の憂悩の無い処を説いて欲しいという願いにより,釈尊が弟子の大目健連と阿難を伴い,王宮の章提希の前に出現した場面である。釈尊は中品下生を結び,台座に坐している。釈尊は肉身部を金泥とし,着衣は金泥地に裁金文様を施した,いわゆる皆金色になる。向かつて右に,大日韓連,左に阿難が合掌して台座に坐している。両者の肉身部と着衣の袈裟は彩色で表される。釈尊の前に脆いて合掌しながら仰ぎ見る章提希を彩色で表している。釈尊の背後には山形の湧雲があり,香闇堀山より到着して間もない一瞬を捉えている。湧雲の陰に王宮の楼閣の屋根が見えている。上部右半分は,章提希が望んだ極楽世界の阿弥陀仏を釈尊が仏力をもって見えるように示した場面である。阿弥陀三尊が雲に乗り,飛来して空中に浮かんでいる。三尊-592-
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