な印象を与えていないのは，制作年代が14世紀前半の早い頃だからではないだろうか。寒色系の暗い色調の地彩色に金の蔵金文様を施す作例には，フィラデイルフィア美術館蔵地蔵菩薩半蜘像や幽玄斎蔵阿弥陀三尊来迎図や徳川美術館蔵阿弥陀如来来迎図など14世紀前半の制作と考えられている一群がある。理智的な画趣で，一種工芸的でさえもある。こうした作風の請来仏画としては，載金ではなく金泥で文様を描いているが，高麗仏画の徳川美術館や根津美術館蔵の地蔵菩薩像があり，沈欝な表情にも似通う面がある。なお，禅林寺蔵阿弥陀如来像は色調が本図と同様であり，画趣も似通う。宋元画の影響が顕著とされ，鎌倉時代の制作とされている（注4）。着衣部分は，我が国の鎌倉時代後期の仏画に一般的な技法と文様によって飾られている。請来仏画の形式を借りながら，表現は技法と文様ともに我が国の伝統に基づいていて，折衷ながら違和感なくまとめ上げている。我が国の請来文物に対しての受容の態様の典型といえよう。3，阿弥陀三尊像宝寿院蔵〔図3〕阿弥陀如来像は画面中央に，正面を向き，右手を垂下して第一指と第三指を捻じ，左手を胸前に挙げて第一指と第三指を捻じて，大きな踏割蓮華座に直立している。向かつて右に蓮台を捧げる観音菩薩と左に合掌する勢至菩薩が踏割蓮華座に侍立する来迎三尊図であるが，来迎雲が描かれていない。絹地は茶褐色を呈している。阿弥陀如来像は肉身を金泥とし，肉身線に朱線を日｜いている。頭部の鉢が聞き気味で逆三角形の面貌である。群青色の肉雲は低く，金泥が掃かれた赤い肉警珠が扇状にのぞく。髪際は波打ちながら，中央で切れ込んで、いる。爪が特に長く表現されている。図像の形式においては，（2）の阿弥陀如来像と同様であり，請来仏画に根ざしていることが分かる。但し，顔の輪郭に関しては，耳の上端が外側へ曲がらず，肉警の端と平行になる。これは禅林寺蔵山越阿弥陀図などと共通している。一方，両脇侍の蓮台を捧持する観音と合掌する勢至との組み合わせは，我が国での成立とされる。しかし，井出誠之輔氏の御示教によれば，ボストン美術館に宋元画のこの組み合わせの右斜め向きの三尊来迎図があるという（筆者，未実見）。中尊に比べ，両脇侍は細身にかかれ，面貌も小さく卵形である。小さい頭に不釣り合いなほどの大きな宝冠を戴いている。請来仏画には余り見かけない形式で，我が国の宋風を学んだ鎌倉時代後期から室町時代の仏画にみられる。腹をつきだした弓なりのポーズは，j青595
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