鹿島美術研究 年報第16号別冊(1999)
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浮世絵様式の直接的始まりというべき菱川師宣の作品では,これまで述べてきた又兵衛風近世初期風俗画にみられたような誇張された過剰な人物の動勢表現はみられない。しかしながらく北楼及演劇図巻〉(東京国立博物館保管)の中の喧嘩場面〔図32〕は,師宣画にしては視点を高くとって描かれており,動勢にも富んだ表現がなされている。当時既に伝説化されていたであろう又兵衛の図様が吸収されていたことを思わせる。I主年),我妻直美「寛永期風俗画についての一考察ー〈避遁図〉という主題を中心として」(『MUSEUMj495 1992年),畠山浩一「〈構曳図〉の変容一湯女図の姿型の系譜−」(『美術史学』181997年)などで男女の出会い場面の共通モチーフの指摘とその変容が考察されている。〈祇園杜・四条河原図〉,山岡家旧蔵〈洛中洛外図〉(京都国立博物館保管)の比較を行っている。史論』瑠璃書房1983年)により,〈花下遊楽図〉(フリア美術館)・「土庶花下遊楽図」(百河豚美術館)などに,共通図様が確認されている。(1) 辻惟雄「初期風俗画と構曳図・湯女図の原型をさぐる」(『日本美術工芸』3731970 (2) 小林忠「北野社頭阿国歌舞伎図」(『国華』9141968年)も,〈北野社頭歌舞伎図〉,(3) 小沢弘「『京名所図』扉風雑考」(『日本美術工芸j483 1978年)(4) (1)および小林忠「寛永期風俗画の変質一妓楼遊楽図を中心としてJ (『江戸絵画705

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