鹿島美術研究 年報第16号別冊(1999)
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(2)海外派遣① 超高精細画像データベースによる美術研究(継続)間:1998年(20日間)出張国:イタリア共和国報告者:東京大学総合研究博物館教授1.目的東京大学総合研究博物館は,平成8年5月の発足以来,学内における学術研究の成果とこれまでに蓄積されてきた学術標本を広く社会に公開還元するための事業として,「東京大学コレクション」の公開をはじめとする特別展示,学術標本の画像情報化,全国各地の学芸員を対象とするリカレント教育,文化庁との連携になる上級学芸員の研修,民間ボランテイア活動の推進など,幅広い事業を行ってきた。また,東大創学120周年の節目にあたった平成9年秋には,安田講堂他の施設を使って「学問の過去・現在・未来」の全学的な記念事業を推進し「社会に聞かれた大学」の実現に大きく貢献した。研究代表者はこれらの事業のすべてに携わる一方,美術史研究者として,館内に敷設された最新のマルチメディア・システムによる超高精細画像データベースの利用の可能性に着目し,より広汎な社会層を対象とする美術史・文化財関連情報の管理,研究,公開,普及を試みつつある。幸いにして,平成7年度と平成8年度には上記の情報化事業に対し研究助成を頂き,超精細デジタル画像の品位に関する試行,画像入力の方法に関する試行,データベースのフォーマット化やその情報のアウトプット法に関する試行など各種の実験を行い,加えてそれらの具体的な運用の成果を実らせるべく,古代ローマの遺跡を描いたピラネージの版画総目録,明治から昭和前期にかけての内国産美術雑誌書影と絵画絵葉書,築地小劇場舞台写真,明治期の写真乾板,考古学出土品,古建築図面などの超高精細画像データベースを試作し,併せてボンベイ壁画群画像データベース構築作業を行ってきた。昨年は,研究代表者ならびに共同研究者が創学120周年を記念する全学規模の事業の推進に忙殺され,研究全体の一時休止を余儀なくされたが,本年新たに研究を再開し,期西野嘉章(研究代表者)733

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