形式よりは内容,デザインよりは機能を追い求める,というのが近代日本社会に共通する政策選択であったことを思えば,これまた当然の帰結と言えるのかもしれない。日本の社会が情報基盤整備に膨大な先行投資を行いつつある現在,適切な「かたちJのモデルを具体化して見せることは,そうした観点からしても,少なからぬ意義を有するのである。画像データベースの構築と活用においてもっとも先進的な国と目されているフランスでは,国家の主導によるデジタル画像化事業が着手されるに先立つて,国立大学校のなかにいち早く「情報デザイン学科」が創設された。そこでは,アーカイヴ事業推進の担い手として,デジタル画像情報に美的・機能的な「かたち」を与えることのできる情報デザイン専門家が養成されており,そこで育った専門家がすでに事業の第一線で活躍している。インターネット等を通じて,フランスの国家データベースが実質的な成果の獲得に寄与しているのはそのためである。蓄積された情報財を,「量的」なストックから「質的Jなフローへ変換し具体的な活用に結びつけるための「デザインj技術に関する理論構築と教育研究の推進は,囲内の一般博物館の将来にとって資するところが大きい。二十一世紀博物館への胎動「二十一世紀の」という修飾語は,先行きの定かでない近未来論の枕調としてもはや通用し難くなっている。とくに博物館の世界においてはそうである。実際,二十一世紀のそれを標梼する博物館構想が,世界各地で取り沙汰されたのはつい昨日までのこと。いまや,それが目に見えるかたちで次々と実現しつつある時代となった。たとえば,一昨年の10月スペインのバスク自治州の中心都市ピルパオにオープンしたグッゲンハイム美術館ピルパオなどその良い例だろう。建築家フランク・0・ゲイリーはアルピオン河の造船場跡地に外壁がチタニウム合金で覆われた巨大な未来派風建築を構想し,世間をあっと驚かせた。建物の外観ばかりではない。内部に現出する全長130メートル,幅20メートル,高さ55メートルのとてつもなく巨きな吹き抜け空間(アトリウム)は,そこに持ち込まれる美術作品のスケールについて,これまでの常識を覆してみせた。さらにユニークなのは,常設作品の大半と展覧会の企画を,ニューヨークに本拠を置くグッゲンハイム財団に依存するという運営システム,施設と事務系スタッフをバスク自治州政府が用意し,学術系スタッフと「ソフトjを他国の民間-736-
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