( 1) 「松に唐鳥図j佐竹曙山〔図1〕(2) 「湖山風景図」佐竹曙山〔図2〕(3)「蝦墓仙人図」佐竹曙山絹本着色縦125.0×横40.0〔図8〕(4)「老松図」佐竹曙山絹本着色縦114.0×横49.0〔図9〕(1)の「松に唐鳥図」と同じく,画面を斜め上に立ち上がる松の幹を描き,下辺に遠[秋田蘭画の草木・松葉の描写]秋田蘭画のなかでいままでほとんど注目されなかった空の描写に加え,画題や被写体になることが最も多い植物に眼をむけてみたい。秋田蘭画作品の多くを見わたすと,一部の中国人物や西洋人物を描いた作品を除けば,その大半に何らかの草木が描かれていることに気がつく。これは,伝統的な花鳥山水の流れを汲んで、いることと,秋田蘭画の生まれた1700年代後半には,動植物を写生したり,それを模写した図譜の流行や本草学に秀でた平賀源内の影響も考慮にいれでも良いかもしれない。一方で、は,秋田蘭画の画人佐竹曙山自身が博物趣味で本草学に興味を寄せたらしいことに起因しているのかもしれない(注1)。ここでは,秋田蘭画作品に出てくる草木の葉の描写に言及しようと試みるのだが,そのなかでも佐竹曙山の松葉の描写を中心にその特徴を抽出してみようと思う。赤いインコが止まっている枯れ枝の上に,青々とした松の葉が描写されている。絵の具はおそらく緑青であろう,松葉の色がよく出されていて,一本一本を丁寧に針のように鋭い葉を描き表している。さらに葉の奥の松かさを葉を透かして描き写生によっている雰囲気を見せてくれている。画面左に松の太い幹が3本描かれ枝がでている部分は画面から外に消え描かれていないが,画面上端に松の葉がわずかに垂れるかのように描かれている。松葉は一本一本の線の集積で「松に唐鳥図」の描法とほぼ同様であるが,線質はやや柔らかい。蝦暮仙人の眼球には毛細血管まで描きいれられ,松の枯れ枝は幹よりも長く見えるほどに極端な遠近感で上空に伸び,その先端には点景のようにカラスらしき鳥が止まっている。曙山のマニアックなまでに遠近法や細密描写を採りいれようとした気持ちが伝わってくるようだ。画面右上には松葉が描かれており,これも一本ずつ線描きしたものだが,前出の2点の作よりは描き込みが足りない。しかし,曙山の洋風画以前の絵に出てくる松の形式的な描き方に較べると,写実的であることは明白である。くを望むかのように風景が小さく添えられている。そして,画面上から大きな枝が垂-127-
元のページ ../index.html#138