鹿島美術研究 年報第17号別冊(2000)
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(5)『京城所見図巻』紙本墨画巻子装l巻全12図風景模様10図個人蔵(7)『陶器図拾題』紙本墨画巻子装1巻12図風景模様6図奈良県立美術館蔵奥書「千九百弐拾弐年秋京城所見富本憲吉(印)大手目安堵村にてj富本が大正11年10月に旅行した当時の京城風景「清涼里小景」,「水落山遠望」,「西大門跡その−J,「建春門J,「東大門城壁一部」,「西大門跡その二」,「南大門遠望」,「東大門満月」,「冠岳山遠望j,「口春圏外観jの10図を風景として描く。また残る1図は李朝製の水滴を模写した「李朝染付水滴Jである。次に2例をあげるようにこの図巻には相当数の異本が伝わるが,風景の収録数は本図巻が最も多く,図巻としては原本をなすものと思われる(注7)。(6)『異本京城所見図巻』紙本墨画巻子装l巻全12図風景模様6図「新京城図巻Jの題名で『富本憲吉全集』に収録奈良県立美術館蔵奥書「千九百弐拾弐年秋於京城写之富本憲吉(印)」『京城所見図巻』の異本の一本。京城風景は,「清涼里小景J,「大田附近」(『京城所見図巻』では「水落山遠望」と題する。以下()内同),「南大門遠望」,「冠岳山遠望」,「西大門附近J(「西大門跡その−J),「東大門附近」(「東大門城壁一部J)の6図を収録,いずれも風景として描く。奥書「千九百弐拾四年盛夏富本憲吉(印)大和園安堵村にて」『京城所見図巻』の異本の一本。「大皿西大門附近」,「水滴松林J,「壷太田附近」,「八角皿南大門遠望J,「中皿西大門附近J(『京城所見図巻』の「西大門跡その二J)'「飾瓦冠岳山遠望jの6図の陶器模様の間に草花模様など6図を交える。この中「松林」は水滴の模様として描き,李朝期の作品の影響を強く受けた富本の模様とみられ,大正11年制作の湯飲や煎茶器など陶磁器の作品にも見受けられる。(8)『安堵村八景』紙本墨画巻子装l巻全8図風景模様8図『富本憲吉全集』に収録大原美術館蔵。序文年紀「千九百弐拾参年孟春」奥書「富本憲吉大和安堵村工房にて」「竹薮に固まる、三ツの倉j,「高塚j,「砂liJ,「陶器焼成」,「河心J,「重層小屋」,「ふるき地蔵堂J,「藁棒塔」の安堵村風景8図を描き,各々に解説を記す。いずれも風景のみで陶磁器の模様としては描いていない。242

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