格子状に区切られた窓が強調されている。この後者のアングルは「初期の近代建築」展に出品されているザイドマン撮影の同じカーソン・ピリー・スコット百貨店の写真のアングルと同様である〔図4〕。写真の選択においても,シカゴ派を近代建築の先駆けとして位置づけようとする意図に合致したものとなっているのである。この写真の横につけられた解説は次のようである。水平窓、の処理がずっと発展したものO外壁の感覚は消えてしまっている。防火のためにテラコッタで覆われた垂直な柱と水平の梁の格子だ、けが残っている。下の階の装飾的な化粧張りはサリヴァンに特有のものである(注16)。この解説は,上層部の格子状の窓についてまず言及しており,近代建築との共通性を示しているが,同時に下層部の装飾にも触れている点で,従来のサリヴァン評価を継承してもいる。ところが,当時のヨーロッパの近代建築との共通性を強調する写真は,さらにこの展覧会の後に出版された書物の中で,実際に両者の写真が併置されることにより,一層強められてゆくことになる。例えば,トールマッジは『アメリカの建築の歴史』(1927年)の改訂版(1936年)で,ホーム・インシュランス・ビ、ルと1933年のマーシャル・フィールド・オフィス・ピ、ルの図版を同一ページに並べ,前者に「摩天楼の父」,後者に「その子どもの一例」というコメントをつけてシカゴ派の先駆性を示そうとしている〔図5〕。さらに,ギーデイオンは,シカゴの評価を決定づけた『空間・時間・建築』(1941年)で,こうした同一のページに図版を効果的に併置する方法を,より徹底的に行っている(注17)。例えば,「シカゴ派Jの第2ライターピルと,ル・コルピュジエのメゾン・クラルテのガラスのファサードの窓部分の写真を並べたページ〔図6〕。後者の写真はlレ・コルピュジエの『全作品集』に掲載されたものと同じ写真であるが〔図7〕,『全作品集』には掲載されていた最下層の部分はカットされ,水平・垂直の要素のみからなる構成が強調されている(注18)。そして,リライアンス・ピルとミース・ファン・デル・ローエのガラスの摩天楼案を並べたページ〔図8〕。前者の写真は,ギーデイオン自身の撮影で,交差点の斜向か320
元のページ ../index.html#331