鹿島美術研究 年報第17号別冊(2000)
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注朝の造形活動との関連を指摘するが,現時点ではどちらとも言いがたい。また,本像とよく似た印相と衣文表現を持つ南インドの作例として,アーンドラ地方のアマラーヴァティー(注13)やブッダパードから出土したブロンズ製の仏陀像(注14)が注目されるが,これらの年代も確定されていない。よって本像の制作年代はいまは5〜8世紀と広めに考えておくのが穏当であり,この時期の南インドとスリランカの仏陀像の展開をさらに詳細に検討した上で,あらためて厳密な制作年代の確定を行うべきであろう。以上,きわめて限られた作例ではあるが,4例の仏陀像とその関連作例の像容を検討した。それらの特徴から考える限り,アヌラーダプラ時代の仏陀像の初期展開は,アーンドラ地方の仏陀像の影響を直接的に受容し,それを独自の表現へと消化していく過程として把握できると思われる。この像容の展開はその後,7〜8世紀に頂点を迎える後期アヌラーダプラ時代の仏陀像制作で完成を迎えることになる。この時期の仏陀像はいずれも粒子の粗い白雲岩に彫られ,頭部の螺髪は小粒で立体的であり,白老相は表さず,頭背部の頭光を載せる突起はなくなっている。また,衣を透かして両脚の存在を表しているなど,その表現は既にアーンドラの仏陀像のそれから大分遠ざかっている。今回紹介したアーンドラ風の強い作例群と,これらの後期アヌラーダプラ様式の典型的な様式の仏陀像との間にどのような像容の展開があったのかを跡付けることも,今後の課題である。ラ美術の仏陀像一浮彫像に見るその成立と展開」(『仏教芸術j249号,平成12年)13〜48ページ。じ像容を示す仏陀坐像2体(収蔵庫に保管)と,アーンドラ製と思われる石灰岩製の浮彫断片数点も見つかっている。(1) Report of the Archaeological Survey of Ceylon for 1952, colombo, 1953, p. 24 and pl. v. (2) アーンドラ地方の仏陀像の特徴についてはすでに別稿で論じた。拙稿「アーンド(3) Administration Report of the Archaeological Commissioner for the Financial Year 1962 63, Colombo, 1964, pp. 52-53 and pl.皿−V.なおこの発掘では,本像と同(4) Elizabeth Rosen Stone, The Buddhist Art of Nagarjunakonda, New D巴lhi,1994, 405

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