⑧ 19世紀に日本からヨーロッパに輸入された美術の実態とその影響について一一ライデン国立民族学美術館司ウィーン国立工芸美術館ーパリ・チ工ルヌスキ美術館等,調査報告研究者:武蔵野美術大学,成際大学,青山学院女子短期大学,神田外語大学ライデン国立民族学博物館のマッティー・フォラー学芸員,ウィーンの国立工芸美術館のヨハネス・ウィーニンガー学芸員,パリ市チェルヌスキ美術館のミシェル・モキュエール学芸員,国立ギュスターヴ・モロー美術館のジュヌヴイエーヴ・ラカンブル館長,国立ギメ美術館の図書館司書尾本圭子氏,国立エヌリ一美術館の研究家シャンタル・ヴァルイ女史の各氏は,博物館や美術館の貴重な資料,データベースなどを自由に検索することをご許可くださり,さまざまな関連事項や文献のご教示さらには収蔵美術品の特別鑑賞の便すらはかっていただいた。調査報告をはじめるにあたり,心から感謝の意を表したい。19世紀の草分け的な極東美術収集家たちは,美的趣味というより啓蒙的熱意から収集を実施し,私費を投じて展示会を聞き,私立美術館を開設してまで,その成果を公表しようと努めた。彼らの努力はパリ,ライデン,ウィーンなどの様々な公共博物館,美術館の成立発展に寄与したが,その後の各館の大きな発展が,彼らが初めて収集品を披露した時に西洋の人々に与えた衝撃や影響の実態を見えにくくしている。私の研究は,19世紀に収集され紹介された極東の美術品は,当時どのような景観でヨーロッパの人々を魅了したのかを,ライデン,ウィーン,パリ3都市の諸美術館での調査を通して推察し,西洋芸術への影響を考察しようとするものである。具体的には,ライデン国立民族学博物館とウィーン工芸美術館においてシーボルト父子の収集した絵画の実態を調査し,パリのチェルヌスキ美術館,ギュスターヴ・モロ一美術館,ギメ美術館の分館エヌリ一美術館などで19世紀に輸入された仏教美術の状況をさぐった。1.ライデン民族学博物館現在37403の所蔵番号を数える膨大な民族学コレクションを所蔵するライデン民族非常勤講師隠岐由紀子-420-
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