鹿島美術研究 年報第17号別冊(2000)
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ゲルのコレクションより),葛飾北斎500〜600枚,歌川豊国の美人画,芝居絵200枚,歌川国貞600〜700枚,歌川国芳400枚,歌川広重800〜1000枚,菊川英山300枚,渓斎英泉450枚,鳥居清長30枚,細田(鳥文斎)英之25枚などを数える。外国で成立したコレクションであるから,重複,初代,二代などの混同はあると考えられるが,将来この膨大な数の錦絵群がデータベース化されると,未知の構図が現れる可能性も高い。日本から専門の研究家が赴いてデータベース化を手伝うなどの今後の研究協力が切に望まれる。美術においてヌード好きな西洋のこと,民族文化的興味からしても,絵画や浮世絵のコレクションには春画が含まれるのではないかと考えたが,フォラー氏によれば国立民族学博物館には春画の類いの所蔵品が皆無だという。長崎の出島に滞在した異人たちは,出島を出る際に常に警護の名目で見張りの侍が同道していたため,それらを購入する機会がなかったのではないかというのが,氏の意見であった。一方で、,1844年にオランダ国王ウイレム二世が将軍に送った親書の返札として,幕府からオランダ国王に贈られた16双の豪華な金扉風が,今はライデン国立民族学博物館の所蔵になっている。オランダ国王はこの親書で,自国一国が日本との貿易を独占する旨味をあえて犠牲にしても,日本の開国と貿易拡大を進言したのであり,上述の幕府からの贈り物は,1860年にライデン市での「日本政府からオランダに贈られた芸術品j展で公開され,狩野派,土佐派など奥絵師の描く「花咲く樹,浮かれた馬,走る馬,狩猟の場面」が当時のライデン市民を魅了したという(注9)。仏画以外の仏像類の所蔵に関しては,地蔵菩薩が6'7体,立像30〜40体,座像5体(内3体はシーボルトの次男ハインリッヒの収集したもので,増上寺1648年の年記があるという。残る2体はピングからハーグのコレクターに売られ,1883年アムステルダムの国際貿易博覧会に出品されたもの),金属製の小仏像12体などがあると聞く。1883年のアムステルダムでの国際貿易博覧会では2〜3体の観音像が,珍しい動物植物が見られる庭園ARTIS(Natura Artis Magistra)に飾られたといい,仏教彫刻が博覧会のエキゾチズムをもりあげる装飾として利用されたことがわかる(注10)。2.オーストリア国立工芸美術館(MAK)オーストリア国立工芸美術館では,データベース化が完了している浮世絵コレクシヨンを中心に調査をすすめた。-423-

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