鹿島美術研究 年報第17号別冊(2000)
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(2) 明暗表現:直接的にせよ間接的にせよ,カラヴアジオの明暗法の影響が認められ(3) 人物:頭部ががっちりとした人物が登場する。宗教的場面を除くなら,いずれの(1) 構図:薄暗い室内空間を舞台としている。人物や物は画面いっぱいに近い視点で〔表1〕〈三人の楽士)Tr巴SMusicos, 1617-18頃,87×llOcm,ベルリン国立美術館〔図l〕〈昼食(食卓を囲む三人の男)) El Almuerzo, 1617 18頃,107×lOlcm,エルミタージ、ユ美術館〔図2〕〈昼食(食卓を囲む少女と二人の男)) El Almu巴rzo,1617-18頃,96×112cm,ブタペスト国立美術館〔図3〕〈マルタとマリアの家のキリスト>Cristo en casa d巴Martay Marfa, 1618, 60×103. 5cm, ロンドン,ナショナル・ギャラリー〔図4〕〈卵を料理する老婆と少年)Vi町afriendo huevos, 1618, 99×169cm,スコットランド国立美術館〔図5〕〈エマオの晩餐(女中または混血女)) Escena de cocina con Cristo de Emaus, 1618頃,55×118cm,アイルランド国立美術館〔図6〕〈女中(混血女)> La Mulata, 1618 1620頃,55.7×104cm,シカゴ美術研究所〔図7〕〈食事をする二人の若者)Dos jovenes comiendo, 1618-20頃,64.5×105cm,ロンドン,ウェリントン美術館〔図8〕〈セピーリャの水売り)El Aguador de Sevilla, 1620 22頃,106.7×8lcm,ロンドン,ウェリントン美術館〔図9〕本来ならば,展覧会での作品の比較検討を元に一点ずつに関する考察が必要であるが紙面の都合上,これら9点に共通な点を挙げることでベラスケス作品の特徴をまとめておく。描かれ,室内全体の様子は把握できず,器物が置かれているむき出しの木のテーブルなどはいずれもその一部が切れた形で描かれている。人物と静物は簡素に配置されているが,この点に画家が周到に用意した画面構成であることがうかがえる。る。激しい明暗の対比。全体的に暗い室内空間に強烈な光を当てることによって人物や器物を画面に浮かび上がらせ,明暗法は,モティーフの個々の形態を迫真的に描くための手段として用いられている。作品でもその人数は3人までに限られているが,これもまた個々の対象をしっかり470

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