(2) スペインにおいて16世紀末頃に現れ,特に17世紀前半に盛んに描かれたボ、デゴン(3) カラヴアジオ作品は,すでにいくつかの模写を通してイベリア半島に存在していDavid Davis W. B. Jordan and P. Cherry W. B. Jordan (bodeg加)は,現在では,スペイン特有の静物画としてNaturalezamuertaと同じものとして解釈されている。しかし,これらのボデゴンが描かれ始めた当初は,これらの絵画は静物画(Natural巴zamuerta)とは区別されており,絵画の新しい一形式であったと考えられる。ボデゴンという言葉は,地下の倉庫,台所あるいは主として酒や簡単な食べ物を提供する場所を指すbodegaに派生すると考えられ,庶民の日常の簡素な食料品や食器類又はそのような場所を背景に飲食する人々を描いたものであった。社会の低下層に生きる人々,そのような人々の生活の場となるbodegaや家の台所を背景に日常使用する質素なコップ,机が描かれている。ボデゴンは,静物だけが描かれた静物画的ボデゴンと人物を配した風俗画的ボデゴンに分けられる。ベラスケスのボデゴンは,風俗画的性格を持った厨房風俗画として定義することができる。〈マルタとマリアの家のキリスト〉,〈エマオの晩餐(女中または混血女)〉のように後景に宗教主題が描き込まれたものも,その宗教的場面よりは画面の中で大きく前景を占める厨房の様子,人物,静物の描写が際だっており,従来の研究ではこれらもボデゴンとして位置づけている。また〈食卓を囲む女と二人の男〉〔図3〕,〈女中(混血女)〉〔図7〕は,おおむね,ベラスケス作とされているが,疑問が残る作品である。筆者としてはこれら一連の作品の最後に時代的にはマドリード時代の作であり,主題的にも神話主題であるが,〈バッカスの勝利(酔っ払いたちD(1629,プラド美術館)を加えたいが,これに関しては別の機会にあらためて論じたい。Madrid, 1999 Los bodegones de Vefrizquez y la verdaderαimitaci6n de! natu-ral,展覧会カタログ<Velazquezy Sevillα> Sevilla, 1999 Velazquez’s Bodegones,展覧会カタログ<Velazquezin Sevilla>, Edinburgh 1996 Spanish Still L俳fromVelazquez to Goya, London, 1995 Spanish Still L俳inthe Golden Age 1600-1650, Fort Worth, 1985 476
元のページ ../index.html#487