鹿島美術研究 年報第17号別冊(2000)
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一38注(1) アクト・アップ(AIDSCoalition To Unleash Power) 1987年3月,ニューヨークの(2) Grover, Jan Zita.,“OI : Opportunistic Identification, Open Identification in PW A た。「エイズがいかに写真を変えたか」。この大命題への答えをここで早急に出すことはできない。しかし90年代を通して,エイズを巡るイメージの根本的な再編成が起こっており,それが写真に大きな影響を与えていることは確かで、ある。その議論の詳細は今後に譲ることにする。ゲイ&レズピアン・コミュニティ・センターでのラリー・クレーマーによる演説に応えて成立された非営利のエイズ・アクテイヴイストの組織。ダグラス・クリンプ「哀悼と戦闘,エイズ実践運動の私の師,グレッグ・ボードウイツのために」(訳:笹田直人)『CabaretFor AIDS』展カタログ,VisualAIDS TOKYO Installation Staff, 1992 Portraiture”,Over Exposed, Essays On Contempor,αry Photography edited by Carnl Squiers, The New Pr田s,New York, 1999, p. 113また,この声明の邦訳としては以下のものがある。ダグラス・クリンプ「エイズと共に生きる人々の肖像」(訳:石塚久郎)田崎英明編『エイズなんてこわくないエイズ/ゲイ・アクテイヴイズムとはなにか?』河出書房新社,1993年。以下の全訳は原文および邦訳を参照にしつつ筆者が手を加えている。コンテクストのない写真はもういらない。/エイズと共に生きる人々(PWAs)の表象は,この展覧会を観た人が美術館を出てから彼らをどう認識するかだけでなく,エイズのための基金や法整備,教育といった重要な問題に,決定的に影響を与えるだろうと,私たちは確信している。/表象を創り出すというアーテイストの選択は,彼自身の作家としてのキャリアや展覧会の企画意図や作品が実際に展示される壁面を越えてそれ以上の影響を与えるものである。/結局,表象は描かれた人々に影響を及ぼす。/この危機的な状況を,日々エイズと共に生き,そして彼らを愛する人々の現実に目を向けることなく,彼らを哀れみと怖れの対象として,見放された孤独な存在として,エイズと共に生きる人々を描くこの展覧会は,エイズ、への一般の誤った認識を助長させている。/事実:試験的薬の投与と栄養やヘルスケアのより充実した情報によって,診断され

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