角度と足の位置と形に注目して分類した。その結果,半身像I, II, III (1), III (2),全身像I, IIの分類分けがなされた。この中で,サイズのわかっているものはそれを記し,同一グループ内の人物像のサイズ比較のため,幼児キリストの頭部の幅を測った。正確を期すためにキリストの耳の最上部とその反対側面の自の最上部の線とを結んで頭巾を計測した。型紙いる例では三枚重ねにして,輪郭線に沿って破線状の穴を空け,炭の粉をふって下書きデッサンの輪郭を取るもの(注7)一一ーを使っていれば,頭部の大きさはほぼ同じになるであろうと考えられることから,このデータにより型紙使用の存否が窺われるであろうと推測したためである。これらの分類に登場するのは,フリュッセルの画家たちでは,マグダラのマリア伝の画家,金の錦織りの画家,刺繍の葉の画家の作品,ブルージュでは聖女ウルスラ伝の画家,聖女ルチア伝の画家の作品である(注8)。[聖母子半身像,タイプI]聖ルカタイプロヒールの〈聖母を描く聖ルカ〉の聖母子の部分図〔図1〕と幼児キリストのデッサン〔図2〕をこのタイプの祖型として示した。マグダラのマリア伝の画家の聖母子〔図3〕は,幼児の足の形,右手,姿勢,聖母の首,頭部,右手などロヒールの〈聖母を描く聖ルカ〉の聖母子と相似か合同形と見られるが,聖母の左手と幼児の左手は異なっている。両者の幼児の頭部幅は聖ルカが5.3cm,マグダラのマリア伝の画家の方が4.9cmで、ある。計測の誤差を考慮すると,両聖母子像はほぼ同じ大きさと認められ,両聖母子像は同じ型紙に由来すると推測される。〔図4'5' 6〕は,聖女ウルスラ伝の画家の作品で,背景と聖母の衣の模様にヴアリエイションが見られ,窓ガラスに紋のついたものと紋のないものがあり,既製品あるいは半既製品に注文者ないしは購入者が家紋を入れるよう注文した可能性が考えられる。このように背景や聖母の衣の模様のみを変化させた例は他にもあることから,画家が客に聖母子像のモデルを見せて,どのような背景や聖母の衣の文様にするかを注文者,購入者の希望に合わせて制作した販売方法がとられたのではないかと思われる。聖女ウルスラ伝の画家はブルージュの画家であり,後のブルージュの画家の例でも見るように,ブルージュの画家の幼児キリストの両足は揃えて置かれず,動きの出た形になっていることに気付かれる。幼児の両足のこの種の扱いは「ブルージュ型」538 知られて
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