26×16cmで,頭幅は2.686cmで、ある。故に,〔図22〕のサイズは〔図21〕のほぼ2倍で頭の大きさ,つまり人物像の大きさもそれに比例して,2倍になっている。この例から,型紙を使ったとしても,大きさは自由に変えられた,つまり縮小,拡大は可能で、あったと考えられる。実際,サイズの変更はそう難しいことではなかったと思われる。故に型紙を使って下書きデッサンをした証拠として,サイズが等しいというのは十分条件ではあっても,必要条件とはならないであろう。〔図23〕は〔図20〕とは幼児の位置が反対であり,幼児の挙げた手も〔図23〕では祝福の形をしており,一見,他のタイプに属すように見えるが,幼児の両足の形,体の形,腕や胸,膝の聞き方から言って,〔図20〕の裏返しである。しかも,聖母の頭部のみは〔図20〕と同じ傾きで,型紙の表の形を使用して首から下の裏返しの像に繋げたものと見える。聖母の頭部と頚部のつながりの不自然さ,幼児の方に頭を傾げず反対に傾げたポーズはこのような理由によるのではないだろうか。透き移し紙の使用があればこの種の使用方法は十分可能だったと思われる。[聖母子半身像『タイプIll-(2)]口ーラン・フ口ワモンタイプ〔図24〕を祖型とする幼児キリストが右手を祝福する形で挙げており,座っている姿勢で描かれているタイプである。〔図25,26, 27〕はマグダラのマリア伝の画家作で,祖型では祝福のために挙げた右手にリンゴやざくろを持たせている。聖母の頭飾りが同じ輪郭のなかで少しずつ異なるヴァリエイションを持たされている。幼児の頭部の幅は,〔図24〕が,5.3cm,〔図25〕は4.72cm,〔図26〕は5.Olcmで、ある。この差も計測の誤差を考慮すると,これらの頭部の大きさはほぼ等しいものと見て良いのではないだろうか。ただし,聖母像は〔図11〕に近い。とは言え,幼児はその足指と足の甲の形から〔図24〕のものであると見るのが妥当で、あろう。このように聖母と幼児が一つの祖型から取られていない場合,別の型紙から取られて合成されたものが新たな型紙として多くの合同形の作品,ないしは相似形の作品の下書きデッサンとなっていったことも考えられる。よって,必ずしもロヒールの祖型そのままではなく,各画家のアトリエにこのような組合せによって作られた型紙が存在したと見るほうが妥当であろうと思われる。又は,今日では失われたこのタイプのロヒールの作品が存在した可能性もある。[聖母子全身像司タイプI]シルバーポイントデッサンタイプ〔図28〕はシルバーポイントによるロヒールのデッサンであるが,聖母子像の部分が540
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