かと思う。また,二十八部衆については,『千手経Jの中,千手観音法を諦持する者を衛護する善神二十八を挙げ,また,善無畏の訳した『千手観音造次第法儀軌』にやはり諸神を挙げている。周辺景については,千手観音関係経典には詳述したものはないが,『華厳経』入法界品や『不空霜索神呪心経』など,観音の住する補陀落山の情景を記述したものがある。また,『図像抄j(十巻抄)をはじめ種々の図像集に千手観音の記載があり,画像との関連で逐次述べようと思う(『大正新修大蔵経』図像篇各本を参照した)。なお,別表として,「千手観音関係経軌における像容の記述(1)・(2)(表1・2)J,「千手観音画像一覧(表3)」,「千手観音画像比較表(表4)Jを付した。I .千手観音像の像容について1 .頂上面・脇面の問題まず,頂上面と脇面の問題についてみてみよう。経軌によれば,『摂無擬経』では五百面,『千光眼観自在菩薩秘密経』では十一面,両界蔓茶羅胎蔵界蔓茶羅虚空蔵院の千手観音像では二十七面となっている。中国の造像例では十一面のもののほか,本面のみのものや五十一面のものなど多様であり,特に定まった傾向はない。一方,日本の千手観音の画像例における頂上面は,大きく分けるならば①二十七面の系統のものと②十一面の系統のものがある。もちろん,表にあるとおり,耕三寺本のように五十二面のものもあるが,これは異例と考えられ,上記2系統に集約される。この2系統の経典・儀軌等に根拠をたずねてみよう。①の場合,両界蔓茶羅胎蔵界憂茶羅虚空蔵院の千手観音像の像容がその根拠と考えられる。経典・儀軌には見当たらない像容である。「諸説不同記」によれば,「有二十七面。正面遁覚一面。次上七面。次上七面。次上五面。次上五面。下三面各三目。左遺一面現歯二牙上出。右遁面出歯為微咲形。」とあり,正面の本面,左右の脇面,さらに頂上の二十四面,合わせて二十七面としている。この系統の2遺品,清澄寺本,金峯山寺本とも上記の表現をとり,明らかに現図胎蔵界量茶羅中の千手観音像を根拠としていることがわかる。彫像においても立像ながら法性寺像は脇面を有するこ十七面に造られこの系統といえるだろう。さて,ここで,このように胎蔵界量茶羅中の千手観音とまったく同じ像容のものは,572
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