グリーンパーグは垂直方向に床に置いて作品を見ているようだ。「彼[ウィリアム・ルーピン]が,弟のために買うと決意するのをためらっている唯一の理由は,「火の柱」が貴方の「イメージ」としてしばらくの間定着する程度に貴方が続けてくれるかどうかという疑問が頭にあるからだと言っていました。j「ピル[ウィリアムの愛称]の立場は変わりません。「柱」の系統でサイズが7か6フィート×5か4フィートくらいのものであれば,その系統が一時的で移ろいやすいものでない限り,つまりあまりに性急に放棄しない限り,いつでも買う準備はできています。私は,彼の考えが分かるだけでなく,同じ意見です。それは彼のためというよりもず、っと貴方のためにそう思います。そしてまた,彼がルイスの作品を買うのに冷静になっている主な理由は,サイズの問題を措けば,貴方の「イメージ」,貴方の現在のイメージに関する彼の混乱だと思います。」「弟Jというのは,ローレンス画廊の経営者ローレンス・ルーピンのことである。後にニューヨーク近代美術館絵画・彫刻部門長となる兄のウィリアムは,当時はサラ・ローレンス大学で教鞭を執る傍ら画廊経営者としても活躍していた。ローレンスは兄の協力を得てルイスの作品を手がけていた。この文章からは,画家の作品制作の場に批評家や画廊主が大きく関与した様子が窺える。ウィリアムは,前年の取引のことが念頭にあったに違いない。彼は60年,ルイスの絵画を13点購入した。その中には移行期の作品が4点あり,今となってはルイスの絵画と思えない作品も含まれていた。この失敗があったからこそ,ウィリアムは作品購入に蒔賭したのではないか。この手紙に対する返事はまだ、見つかっていないためルイスがどう応答したのかは分からない。だが,61年にウィリアムが購入したのはヴェール絵画1点だけだったところを見ると,ルイスはウィリアムやグリーンパーグの助言を拒絶したように推測される。ルイス自身は,結局この後ストライブ・シリーズを続けていくが,それは,批評家や画廊主の思惑とは別に,自らの意志で選択した結果と思われる。グリーンパーグ、は続ける。「ピルの反応は措くとしても,私は,近年貴方が小さく描けば描くほど,絵が鋭くなってきていると思います。この反応は,私の商売事とは関係がありません。純粋で単純な問題です。そうして私が気づいたのは,「柱J形式の片側からむき出しのカンヴァスを減らせば,絵が強くなり,もっと勢いのあるものになるということです。」ストライブ・シリーズは現在,細長のフォーマットでのみ知られている。その直前51
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