鹿島美術研究 年報第17号別冊(2000)
651/763

に中央の狩野派の手になる肖像を始め,対馬宗家のように扉風を背にする独特な図様や男女像の存在が知られるものもある。また先に述べたように近世の黄葉宗絵画の影響を受けた肖像も見られる。さらに,雲谷等顔の嶋井宗室像(個人像)のような商人の肖像や長崎では,江戸後期のオランダ人の肖像画など他の地域にない特徴を持った肖像を見出すことができる。このように肖像の中に九州の文化のさまざまな様相が読みとれるであろう。これらをさらに精査し,位置づけることにより,九州の美術の意義が明確になってくるのではないかと考える。640

元のページ  ../index.html#651

このブックを見る