を読み取ることが出来る。まず,病に擢った男は高い背板付き寝椅子型寝台(レットゥッチォ)に体を横たえたところで,室内には悪魔が肱雇し,大鎌を携えた死神が戸口を窺う。だが壁面に掲げられた聖母子と二天使を描くトンドが,室内上方に出現する小天使らとともに男の魂を庇護しているようだ。続く第二の挿絵では,臨終の床にある男の足元方向の壁面に,カッソーネを祭壇としてその上部にキリスト楳刑彫像を安置する。病人はドメニコ会士により告解をなし,家族は脆拝合掌して臨終を見守るが,礁刑像を見上げるー中年女性の祈りに応えてか,彼女の頭上に聖母子と二天使が出現して死者の魂を迎えようとしている。ライデツカーが指摘する通り(K.Lydecker, op. cit., p. 180.),聖母の出現の描写は第一の挿絵に描かれていたボッテイチェッリ風の聖母子トンドの反転像に近似しており,顕現のヴイジョンは室内板絵画像の描写と連続する。画像を介した祈祷膜想のヴィジョンは,美術品に表わされた聖母子やキリスト受難像を想起・反復して,板絵画像の描写そのものと融合していくのである。-701-
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