鹿島美術研究 年報第17号別冊(2000)
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術史,古代史,また古典文献学といった他の分野の学術研究者や学生達にも興味深い,元来の専門分野に留まらぬ広範なテーマである。このシンポジウムでは7カ国(ブルガリア,ドイツ,フランス,ギリシア,イタリア,日本,米国)からの研究者,学生また熱心な聴講者達の参加を得て,22の研究発表が行われ,その後展開された,日本側の参加者も交えての活発な論議では,ヘレニズム絵画(前4世紀後半〜前l世紀)の数多くの観点や問題について考究され,エトルリア,南イタリア,マケドニア,トラキア,南ロシア,アレクサンドリアなど,地中海及び黒海周辺の様々な地域における同絵画のイコノグラフィー,意義内容,様式と画法,年代評価,保存などについて意見が交わされた。研究対象とされた記念物のジャンルは,特に葬祭絵画,住宅や宮殿を装飾した壁画,彩飾墓標(テンペラ画法),モザイク,多彩色問器などである。主題に関連するギリシア語或いはラテン語の古代文献についても言及されたほか,幾つかの研究発表では,特にマケドニアなどでごく最近発見され,まだ公表されていないものも含まれる,最高の質の葬祭絵画が紹介された。各発表は平均して45分間,使用言語は英語,フランス語,ドイツ語,或いはイタリア語であった。また,各発表のレジュメは,言語と日本語訳と両方用意され,参加者に配られたが,発表内容の把握を一層容易なものとした。どの発表も,多数のスライドによって,実例が明瞭に示された。東京大学の学生若干の積極的な協力と,総合研究博物館ミューズ・ホールの完備された設備は,最後の総括大討論に至るまで,終始,シンポジウムの滞りない進行を保証した。日本の研究者の2つの発表,並びに東京大学や日本の幾つもの他の大学及び博物館の学術研究者や学生達の出席によって,日本側からの参加は十分で、あった。デイスカッションの際には,日本人参加者達からも数多くの質問が寄せられた。シンポジウム終了後,欧州、|からの招致研究者達には,東京並びに関西,四国において,日本の他の大学,博物館及び研究機関の研究者達とも何度か接触する機会が設けられ,さらに多くの意見交換がなされた。それは特に,早稲田大学(東京),同志社大学(京都),京都工芸大学(京都),大塚国際美術館(鳴門), MIHO MUSEUM (信楽),岡山市立オリエント美術館などの関係者である。日本の数多くの有名な古文化財特に京都と奈良並びに美術館/博物館の訪問は,招致研究者達に日本の文化と美術722

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