鹿島美術研究 年報第17号別冊(2000)
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2.ルイジピゴリーニ国立民族博物館(ローマ市エウル):当初の予定に無く調査途9月)があり資料的価値を評価される見解などを頂いた。中で訪問先に加えた。ルイジビゴリーニ(Luigi.Pigorini)他2名により考古,民族博物館として創立(1875年)' 90年代に民族学人類学の方向性を強調する。日本美術工芸収蔵品の主要となるのはラグーザコレクション(購入1888,1916,二回)で長年収蔵庫に眠っていたが,担当者グループによって収蔵品目録(約150冊,全アジア部門約13,000点,日本品は5千点以上)が作られ,大部分の所蔵品が写真を伴ってファイルされている。現時点では,収蔵品目録のアジア,オセアニアセクション振分けなどがされていないなどの部分が残されている。参照するのには少し時聞がかかる。建設当時と異なる美術館使用であるために,所蔵品が保存環境やスペースの関係で分散収納されていたり,修復作業進行中である所蔵品も多いためである。収蔵品の収納や整理,分類なども進行中である。実見には日数が必要で、ある。期間中に収蔵品目録のファイルを約115冊まで参照できた。そして,ファイルよりピックアップした数十点を実見させて貰った。収蔵品数では在伊コレクションのベスト3であろうか。写真添付きの蔵品目録を整えた美術館は,当地では未だ少ない。担当者ロレッタ,パデルニ女史は調査に大変協力的で,当調査のイメージ資料入手のためにもご苦労頂色感謝の意を表する。主要な日本コレクションは,明治政府のお雇い外国人,ヴインツェンツォラグーザによるコレクションである。絵画,工芸,武具,万の鍔,浮世絵版画類,着物類(修理され,環境保存管理されている)人形さらに,当時発掘された日本考古品が含まれる。コレクションの特徴は,l,ラグーザ自身やお玉夫人,及び同時代についての資料的として重要である所蔵品が数多く収蔵されている。2,ラグーザ自身のコレクションの意図や動機であったと考えられる「異文化の人々に当時の日本美術工芸品を紹介する」という目的によって収集された「教育資料的」収集である。3,収蔵品の制作年代は,コレクターラグーザと同時代の明治期を中心に,江戸末期の工芸品,そして当時発掘された考古品が加わっている。4,少数逸品選択のコレクションではなく,質的には中級品以下のものが多いが,膨大な収蔵品総数の中には注目に値する所蔵品も少なくない。ラグーザとその時代の日本の庶民的な生活文化や工芸品を紹介するコレクションである。-733-

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