鹿島美術研究 年報第17号別冊(2000)
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所蔵品で注目される例は,一連の能面類,巻物類:立花園巻物,舞伎柴巻物,化物妖怪草紙など,細工類:精巧な根付の技術で作られた明治期の一連の象牙細工,雛人形(上質の雛人形一式から残された五人嚇子),首が象牙製の狐雛人形,及び銀細工の雛道具ミニアチュールなど。その他着物類,金工品は修復作業が当地で進められ,着物類は大部分が修復終了,雛人形(上述の五人嚇子)も最近修理され展示され,昨年日本から寄贈された雛人形一式と一緒に展示された。3.ソレントコレアーレテラノーヴァコレクション:土地のコレアーレテラノーヴァ伯爵(ConteCorr巴al巴Terranova)旧廷の家具,装飾品の一部に中国日本美術品が含まれている。1924年創立。1980年地震で一部被害を受けた。東洋美術工芸品の大半を占めるのは陶磁器で日本製,中国製にヨーロッパ製の東洋趣味イミテーシヨン陶磁器などが加わる。他に漆工芸,象牙細工,扇類など少数収蔵されている。中国製問磁器が圧倒的に多く,日本製は東洋品部門全体の約3割程度で大半は伊万里類である。日本美術工芸所蔵品総数は,約40〜50点。収蔵品数は多くないが質が平均して良く,意匠や形がすっきりしたエレガントで洗練された感覚をコレクションの選択者に伺える。所蔵品の大半を占める陶磁器に混じり,南蛮漆器箪笥2点(江戸時代)を所蔵する。幕末明治以後の制作品の多い在伊日本所蔵品のなかで,南蛮漆器家具類は稀少価値がある。同二点は現在,一点ずつ別の階の各室に展示されている。l,南蛮漆器箪笥は展示室中央(SalaBarocco)に置かれ,“ジャパンニング”西洋製摸倣漆家具の椅子,箪笥などが囲む。コレクター伯爵時代に装飾された一室を偲ばせて興味深い。① 南蛮漆器箪笥:収蔵番号3258幅118.2×奥行50.2×高さ37.5cm 制作年代は17C後半か。厚手の板で作られた観音聞の前扉を聞くと,内部に寸法の異なる大小11個の引出しがある。内のひとつは鍵がついている。黒漆塗り螺銅金銀平蒔絵,約1mmの厚さの飽貝が各引出の長方形枠線,正面扉の表裏,側面の長方形枠や装飾窓枠,鋸歯文,花菱文などの線上に象首長されている。蒔絵の意匠は,トンボ,尾長鳥,獣(犬か?)蔦唐草,枝垂れ桜,花筏,貝に海裳文,菊花束,鉄線,紅葉,松,舟網,雲形等など日本伝統文様の見本の如くに盛沢山の意匠で装飾されている。引出摘みは錫製,銅製の鍵金具,角金具,把手付,一部は後補と思われる。漆膜面は下地層からの小剥落が所々見られ,天板部分では剥落734

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