鹿島美術研究 年報第17号別冊(2000)
750/763

5.ローマ国立東洋美術館:文化庁派遣の絵画修復のための調査団に同行させて頂き6.ヴェネツイア宮国立美術館(ローマ):申請時には,筆者は知らなかったコレクシその他にも,九谷大平鉢,同碗の優品,磁器に蒔絵を加えた作品,日本の寺社や家屋などの精巧な模型,変漆塗り見本のような小皿各種を内包する東屋,など幕末明治初期のヨーロッパへ渡った輸出日本工芸品のアイデアと技術見本のようなコレクションで興味深い。「虫あわせ絵巻j,「浬繋図」(掛軸),「狐草紙絵巻J,「酒飯論絵巻」,「水墨鴨図」(二面扉風)などを実見した。これらの作品について内容は,辻惟雄先生の報告(「鹿島美術財団年報第5号(1987)」掲載241頁〜246頁)を参照とし省略する。「浬繋図」(掛軸)を筆頭に「虫あわせ絵巻」は,特に在伊絵画所蔵品のなかで特に注目に値する優品。ヨンで,調査中に訪問先に加えた。工芸品が中心で,特に重要なコレクションは,ヴルツ(Wurts1843〜1928)による陶磁器類コレクションで,伊万里(有田),薩摩焼など輸出用磁器である。例:美人立像(収蔵番号:85541,寸法高さ45×幅20cm),花寵を持つ美人立像(収蔵番号:8568寸法高さ29×幅22cm),見返三毛猫像(収蔵番号:9217-484寸法高さ25×幅24.5cm)など。他に大童,深鉢類なども優品が揃う。Wurtsコレクション以外にも優品があるが,コレクターなと守については現在不明である。資料など請求中であるから,詳細は別の機会に譲る。陶磁器類以外での優品例は,明治期有線七宝の藤に飛島文大壷(収蔵番号::PV8655 1-2す法高さ180×直径約45cm)以上展示品。四天王など小仏像,蒔絵植,南蛮螺銅箪笥など興味深い(以上非展示)。美術館は歴史建造物であるため収納スペースや保存環境に問題が多い。所蔵品は建物内に分散収蔵されている。収蔵スペースの改善計画中であると聞いた。上述の環境から当然の結果として,漆工芸品,木製仏像など所蔵品の保存状態は良くないのが残念である。仏像,漆工芸品はまず,保存のための清掃などが必要である。担当のスコンチ女史も保存のノウハウや日本からの修復援助を希望していた。日本製所蔵品約200点。737-

元のページ  ../index.html#750

このブックを見る