鹿島美術研究 年報第17号別冊(2000)
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7.ピッテイ宮内王宮博物館,銀工芸館,及び近代美術館内中国の間:王宮博物館には約50点の陶磁器が王宮内の家具の聞や床に置かれる。それらの中には,日本製や中国製磁器査などのために当地で説えられた鍍金製の金具や台などが付け加えられて,室内装飾とされているなど,特に東西の意匠や技術がうまく調和して興味深い装飾品例も見られる。銀工芸館は,公開展示されている。但し,実地調査訪問など在ローマ日本大使館の紹介状で依頼したが,写真資料は不許可であった。日本美術工芸関係の所蔵品は展示品のみであるので,公開部分のみ実地調査をした。公認許可されているフラッシュなし撮影によって資料の一部の撮影をした。展示品の大半は陶磁器,伊万里類である。蒔絵皿などの一部の漆工芸品も展示されている。同ピッティ宮内近代美術館内中国の聞の所蔵品と共通する様式なので,こちらから移動展示されたのではないかと筆者は考えるが将来,詳しい調査をした上で報告したい。近代美術館内中国の聞は,現在非公開。1842年にマリアフェルデイナンダ大公王女(Granduchessa Maria Ferdinanda)のために作られた部屋であり,同王宮衣装係りジョヴァンニポッジの指揮によってつくられた当時流行した東洋趣味の部屋である。陶磁器のほか,内装家具は遡る時代のシノワズリー,ジャパンニング漆工芸品など,後代の手が少なくなく加えられているのが惜しいが優品であり,今後,引き続き調査をしたい。保存状態は比較的良い。8.コッカーリオ市マッゾッキコレクション:ポンペオマツゾッキ(Pomp巴OMaz同zocchi 1829〜1915)によるコレクションで約600点。コレクター自身の意志で設立された厚生施設,老人ホームの一角にある。1864年から1880年の聞に蚕の買い付けのために横浜,函館,長崎などに繰り返し立ち寄る。コレクションの詳しい購入記録は無いが,コレクター自身によって手記が残され,日本往復旅行についても触れているので,所蔵品の年代資料となる。当時の土産物品見本のようなコレクションで特に芸術性の高いものはないが,幕末開国後から明治13年までの資料として貴重で興味ある例も所蔵されている。長崎螺錨,扇,ソーイングBox,鋳金製大香炉など輸出用工芸品が主である。例えば,梅藤樹文脚付き蒔絵螺銅ソーイングボックス:収蔵番号129,寸法幅44×奥行29×高さ79.5cm蝶葡萄文蒔絵ソーイングボックス:収蔵番号120,寸法738

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