⑫ クリストファ一・ドレッサーとジャポニスム一一陶磁器に見る日英交流一一研究者:郡山市立美術館学芸員佐藤秀彦具,金属器,陶磁器,ガラス,テキスタイルなど様々な分野のデザインを手がけた。ドレッサーは,明治9~10年にかけて,ヨーロッパのデザイナーとして初めて日本を訪れた。また帰国後,日本の美術についての本『日本一ーその建築,美術,工芸Jを1882年に出版した。機能性と幾何学的形態に基づいた彼の作品には,日本の金工品や陶磁器などの影響が顕著に示されている。本研究の目的は,英国のジヤボニスム運動に大きな影響を与えたドレッサーと日本との関わりを考察することである。特にドレッサーの来日に焦点をあて,英国からの寄贈品と殖産興業政策に関するドレッサーの影響,及び,ドレッサーが手がけた陶磁器における日本の工芸品の影響を明らかにしたい。1 クリストファー・ドレッサーの来日と寄贈品ドレッサーの来日についてドレッサーは,1876年10月に英国から出航して米国へ渡り,フィラデルフィア万国博覧会を見学した(注1)。ドレッサーが日本に到着したのは同年の12月26日であり,翌年の4月3日に離日している。ドレッサーの来日の目的は以下の三つであった。1.英国から日本に送られた寄贈品の引き渡し2. 日本各地の視察,及び美術工芸品の調査来日後,ドレッサーは政府高官らと面会するとともに,国賓として明治天皇に拝謁した。彼の滞在には,大久保利通,西郷従道,佐野常民などの政府高官が尽力しており,ドレッサーは滞在中博物館の顧問という立場を与えられている(注2)。ドレッサーは,日本へ寄贈されたヨーロッパの工芸品を携えていた。寄贈者は,サウス・ケンジントン博物館(現在のヴイクトリア&アルパート美術館の前身)であり,クリストファー・ドレッサー(l834~1904)は,近代デザインの先駆者であり,家3.ロンドス商会及びティファニーのための美術工芸品の購入第1次寄贈品の経緯とその意義125
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