2.室内用の装飾品や玩具に相当するものが大半で,外国が需要する品が無い。に関する機械の使用,商品の価格や関税,輸送上の諸注意といった点に関しても細やかな指示を出している。物産について日本固有の物産について,ドレッサーはいくつか興味深い提案をしている。それは生萎や寒天などの特産物の輸出を奨めていることだろう。また,米国産のチーズが長年の努力によって,安い価格で英国に輸入されている事例を挙げ,物産を起こすには創意工夫の努力と忍耐力が必要であると説いている。ドレッサーの提言は,巻末の「日本物産輸出上ノ概論」において総括され,1日本の物産で欧州との貿易を盛大にする製品開発は大変難しい」と述べられている。その理由は次の3点である。1 .製造スピードが遅く,少量多品種の製造によって,大量の需要に応えられない。3.精巧な高級品でもなく,安価な品でもない,中級品が多い。このドレッサーの論説は,r大日本美術新報』第二十号(明治18年6月30日)において「工業上の三弊害」として掲載された。ドレッサー著『日本工塞賓見説』ドレッサーは,1878年,ロンドンの芸術協会において,“A抗Manufacturesof Japan, from Personal Observation."と題した講演を行った(注18)0 r日本工塞賓見説』はこの論文の日本語訳であり,主に日本の工芸品の解説と製作過程について述べられている。また,r勧商雑報.1(第9号~14号,明治11年)には,I日本の工芸実見説」として連載された。ドレッサーの日本人観についてドレッサーは,日本の生産体制の不備を指摘したが,その一方で、,高度な職人の技は最高の真価を発揮することを認めていた。ドレッサーは,1日本人は誇りを持ってその仕事に従事し,そこから得られる幸福で満足している」という日本人感を持っていたようである。『日本工塞賓見説』では,日本の工人と英国の工人を比較して「英国の工人は常に不幸で、ある」としている。なぜならJ乙は最小の労力において最大の利益を常に追い求めなければならず,常に安寧130
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