b.胎蔵界蔓茶羅a.金剛界蔓茶羅れた法三之宮真寂(886~927)の『諸説不同記j(略称)には,現図・山図・或図とい3.江戸時代両界量茶羅図の図像的諸系統たとえば,本尊となる大日如来の表現に限っても,金剛界大日如来,胎蔵界大日知来のいずれにも数種の多様性があることが,文献と遺品の両資料によって確認されている。また,絹本両界呈茶羅図と紙本白描量茶羅図が実際に描かれた中国からは,空海・円仁・円珍などの世にいう入唐八家によって,数種類の系統の金剛界量茶羅と胎蔵界量茶羅が請来されたことが知られている。それらの中には,より詳細な検討によって同ーの範轄に含ませる必要のあるものもあろうが,一応作例を中心に分類すると,おおむね以下のようになろう。ここで,各項の蔓茶羅の内容と図像について詳しく論じる余裕はないが,その一部は江戸時代まで系統を伝えている。さらに,後述する東寺蔵の元禄本両界蔓茶羅図制作の際に決定的資料として依用さう三種の胎蔵界蔓茶羅の各尊の図像表現が記されているが,東寺本を現図とする以外,他の二図については,その比定に定説を見ない。今回の研究調査は,全国各地の古利・博物館・美術館などに伝存する多数の江戸時代制作両界長茶羅図のっち,ごく一部の作例を抽出したにすぎないが,それによって,同時代の両界長奈羅といわれるものにもおおよそ次のような系統があるのではないかという作業仮説を提案する次第である。(1) 九会長茶羅(広義の現図蔓茶羅)(2) 五部心観(3) 金剛界蔓茶羅諸尊図様(4) 八十一尊呈茶羅(1) 十三院蔓茶羅(広義の現図蔓茶羅)(2) 胎蔵図像(3) 胎蔵旧図様
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