つω(1) 現図系(2) 非現図系a.八十一尊系ただ,厳密にいえば,いわゆる八十一尊金剛界呈茶羅にも2~3の細分類が可能であa.正系b.変更系b.浄厳系(新安流系)いま,各系統の内容をもう少し説明すると,現図系は,いわゆる広義の現図蔓茶羅と同様に,金剛界九会,胎蔵界十二院から成る両界蔓茶羅である。これに対して,非現図系では,胎蔵界長茶羅図ではほとんど差違がない。従来の蔓茶羅研究において,大阪・四天王寺本(12~13世紀)や兵庫・太山寺(14世紀頃)などの台密系では,胎蔵界蔓茶羅の虚空蔵院の千手観音菩薩と金剛蔵王菩薩の両多面多骨像の前に供養壇を設けることがあったが,今回調査した限りでの非現図系両界長茶羅図の胎蔵界長茶羅では,兵庫・寿福寺本が該当したのみであった。現図・非現図の相違は,むしろ金剛界長茶羅において顕著に表れる。すなわち,八十一尊系は,名称の示すように,八十一体の尊格から成る一会の金剛界蔓茶羅である。る。非現図系のもう一方の系統は,近年,田村隆照,中村諒応などの各氏によって研究がなされている新安流憂茶羅,もしくは浄厳蔓茶羅と呼ぶべきものである。これも一会の金剛界蔓茶羅であるが,八十一尊蔓茶羅のごとく,別種の『金剛頂経』系経軌に依拠したものではなく,むしろ正系の金剛界長茶羅の成身会一会のみを簡略化したとすべきであろう。現図系に考察を戻すと,第一の「正系」は,金剛界九会と胎蔵界十二院が対となり,しかも図像が高雄呈茶羅や東寺甲本蔓茶羅に符合する蔓茶羅である。第二の「変更系」とは,元禄本両界蔓茶羅図を新たな契機として,従来の両界呈茶羅図の図像に修正を加えたものである。のちに文政12年(1829)に長谷寺の木版両界長茶羅が開版され,その後幾度も改版,増刷されたこともあって,この系統の両界憂茶羅図が真言宗の新義豊山派を中心に江戸期に流行した。もっとも,図像的に精査すると,金剛界蔓茶羅成身会の西方輪四菩薩や胎蔵界蔓茶羅金剛手院の侍者の配置に意識的改変や誤解C.逸脱系
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