鹿島美術研究 年報第18号別冊(2001)
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縦412.5cm横378.3cmる供養会の図像を成身会の西方輪のみで改変したと考えている。さて今回,久修園院の御好意によって悪天候にもかかわらず,大幅の両界是茶羅図を拝見させていただいたが,あいにくの風雨のため,本堂において部分的に聞いて撮影せざるを得なかった。しかし,姉妹本といわれる元禄本と比較すると,確かに基づく思想と画師等は同じであるが,細部については,若干の相違を認めることができる。まず,両本の法量,制作時期等は,次のごとくである。-元禄本両界量茶羅図絹本著色制作金剛界胎蔵界.久修園院本両界量茶羅図紙本著色制作金剛界胎蔵界宗覚の伝記等から是茶羅の関係を要約すれば,大命を受けて,知己の仁和寺孝源と難難辛苦の末,やっと華麗な元禄本両界長茶羅図を完成させた〔図1]。もちろん4メートルを越す大幅で、あるので,正固と覚林という二人の補彩者が協力している。羅図を描いて残しておこうとしたのであろう。法量,描線,図像,彩色すべて元禄本に準じているが,今次は桂昌院のような大檀越はなく,絹本から紙本となり,金泥をはじめ彩色顔料も目立って減少している〔図2J。図像的には,ほとんど大差ないが,先に触れた成身会の西方輪四菩薩に限っていえば,次のようである。参考のために,正系とされる御室版と比較しておきたい。四親近名金剛法金剛利左手に党爽をのせた蓮華右辺蓮弁上に万剣左手に党爽をのせた蓮華19年後,宗覚はすでに74才になっていたが,おそらく自らのために同種の両界蔓茶元禄6年(1693)完成正徳2年(1712)完成御室版左手に持つ蓮華に右手をそえる右手に剣元禄本右辺蓮弁上に蓮華独鈷杵久修園院本右辺蓮弁上に蓮華独鈷杵右手に剣縦424.0cm横377.0cm縦422.0cm横375.0cm縦411.7cm横375.0cm

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