鹿島美術研究 年報第18号別冊(2001)
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iqL 縦107.0cm横86.8cm月1-c .逸脱系両界量茶羅図2.非正系両界量茶羅図金剛因金剛語右手は胸前に如来舌なお,後七日御修法の懸用量茶羅となった元禄本は,天保5年(1834)の弘法大師1000年遠忌を記念して開版された「新刻両部長茶羅J(長谷寺版)の底本となり,江戸時代に木版刷りの両界呈茶羅が大流行し,それをベースとして同系統の両界蔓茶羅が数多く制作された。中には版本に彩色したものも認められる。江戸時代の中・後期に制作され,各地に普及した両界蔓茶羅の中には,縦1メートルを切る小型の例が多い。比較的小幅なので,正確な図像を表現することが難しい。町版と総称されるこれらの蔓茶羅は,彩色表現は一応の水準に達していても,図像的には逸脱が顕著である。金胎同法量の場合が少なくない。京都・随心院本両界呈茶羅図金剛界胎蔵界兵庫・周辺寺本両界蔓茶羅図〔図3)C図4)金剛界・胎蔵界兵庫・常楽寺本両界蔓茶羅図〔図5)C図6) 金剛界・胎蔵界厳密にいえば,各尊の図柄の比較的大きな胎蔵界是茶羅は,元禄本系のような使者の配置の混乱はなく,むしろ正系としても不適切で、はない。しかしながら,図柄の小さな金剛界長茶羅では,微細会の三鈷杵表現,供養会の蓮上持物は表現できず,成身会の持物や印相も区別できない。加えて,随心院本と周辺寺本では,成身会中央輪の四波羅蜜菩薩を胎蔵四仏にかえている。レヴェルを落とした金胎不二という解釈であろうか。高野山の大塔や西塔の五仏の組み合わせ説と勘案すると興味深い。このグループには,八十一尊系と浄厳系の二種があるが,今次の研究調査では,幸いにして前者の八十一尊金剛界蔓茶羅を二本確認することができた。-福岡・金剛千手寺本両界蔓茶羅図右手は胸前に法輪縦106.6cm横86.2cm縦116.0cm横99.0cm縦83.0cm横68.5cm左辺蓮弁上に法輪左辺蓮弁上に知来舌右辺蓮弁上に如来舌右辺蓮弁上に法輪

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