。。つム金剛界胎蔵界.兵庫・寿福寺本両界蔓茶羅図金剛界胎蔵界まず,福岡市西区の金剛千手寺本は,金剛界・胎蔵界も縦横同すの正方形で,版画に彩色している。胎蔵界は,尊格配置,図像表現とも正系と異ならない。ただし,知来表現を除く菩薩・明王・天部の大部分の像には両肩から蓮弁台座の外側両端に向けて天衣を大きく翻している〔図7)。金剛界もこの点が特徴となる。他方の金剛界は,いわゆる八十一尊量茶羅であるが,外院には賢劫十六尊・外の四供養菩薩・四摂菩薩のみを配し,奈良国立博物館本や東京・根津美術館本のように賢劫の千仏を描かない〔図8)。注意を払うべきは,四隅の四大明王で,配置と尊名は,次のようである。北東不動明王南西馬頭明王この配置から知られるごとく,金剛千手寺本の両界憂茶羅図は,京都の妙法院版両界蔓茶羅図に描線と身色等を加彩したものである。同版本の開版時期は明確でないが,長谷寺版よりは前と推測される。近くの千如寺には,妙法院版の両界量茶羅の最外院をともに省略した変形の量茶羅図が伝わっている。他方の寿福寺本は,同じ八十一尊憂茶羅といいながら,図像,様式等が相当に異なっている。まず,図像的には,根津美術館本に非常に近い。すなわち,阿閑・宝生・阿弥陀・不空成就の金剛界四仏は,すべて宝冠をかぶっている。それらの四仏を四方から取り囲む金剛薩珪から金剛拳に到る十六大菩薩は,いずれも各部族の鳥獣座に乗るが,身色の区別は設けない。また,外院の賢劫の千仏の顔のうち赤色光背を持つ尊で山形の文様を幾何学的に見事に表現している〔図9)。さらに決め手となるのは,最外院の四隅の四大明王である。筆者が,すでに折に触れて紹介しているごとく(注5),八十一尊憂茶羅の最外院四隅の四大明王の組み合わせには二種があるが,岡本では,北東降三世明王縦84.0cm横84.0cm縦84.0cm横84.0cm縦82.3cm横69.8cm縦83.2cm横68.8cm南東降三世明王北西大威徳明王南東軍茶利明王
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