⑫ フランク・ブラングィン研究一一日英美術交流の一側面として一一研究者:ボーラ美術館設立準備室学芸員はじめにフランク・プラングイン(1867-1956)は,現在では松方コレクションに関わる人物として知られるのみで,その芸術制作についてはあまり知られていない。国内でプラングインの作品を見ることは少なく,所蔵状況も殆ど知られていない。筆者は1995年,東京国立博物館蔵・国立西洋美術館寄託の版画104点の存在を知ることとなり,翌年より国立西洋美術館の研究補助員として,それら104点の整理および来歴の調査を開始した。およそ3年を掛け,すべての作品の調査・データベース化を終え,その結果を「国立西洋美術館寄託フランク・プラングイン版画104点の来歴についてJU国立西洋美術館研究紀要No.3.1 1999年3月,45~60頁)として発表することができた。上記論文は,プラングインと近代日本美術との関わりという文脈において,一連の版画作品について集中的に考察したものであり,その後の発展的な研究の布石となるものであった。本論文では,研究助成を受け昨年より行った調査・研究に基づき,より広いパースペクティヴでプラングインと日本の関わりをとらえ,プラングイン受容の実際を明らかにしようと試みる。日本の美術雑誌でプラングインが取り上げられたのは,おそらく明治43年5月の『美術新報.1(注1)が最初であろうと思われる。森田亀之輔による3ページにわたるプラングイン紹介の記事は,プラングインの生い立ちから画業,当時の画壇での評価を簡潔にまとめ,プラングインの芸術家としての全体像をわかりやすく伝えている。しかし,注目すべきは,この記事がブラングインの「装飾画家」としての側面を重点的に論じているところである。たとえば「極端な装飾的傾向とか又は其粗豪なる筆意とかが彼れの個人性の大部分をなすもので又英国画界に於て彼れがー異彩を有した画家たる所以であるJ(注2)及び「彼れの画の面白味は十分の九迄装飾的要素から生ずるものであるJ(注3)などの表現を見ても明らかであろう。ところが,森田がプラングインの面白味の9割を占めると評したブラングインの装飾的傾向は,日本では図版でしか目にすることができなかった。大画面の油彩画や,1 エッチング作家として■雑誌記事に見るプラングィン受容佐藤みちこ-247-
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