phu 天蓋のある豪者に飾られた王の寝床は,r法と王の(Lexet Rex)がこの広間の天蓋の下で休らうのが見え,…両者がともに正義の床にいるのが見える」場所(注20)と言われた。「正義の床J(この場合は高等法院の親裁座)を表すルイ14世のメダル〔図6)の「ここから至高の法は発する」との銘記は,王の床が正義と司法の場であることを強調する。このメダルには,キリスト教の「空の御座」を模した空席の王座が表されている(注21)。その王座は天蓋で覆われ,そこには王権の象徴である王坊と司法権を象徴する法杖が置かれている。背面には太陽の紋章が入っている。この「正義の床」の玉座の両側には,r正義Jと「信仰Jの擬人像が立つ。ここで一度,天蓋付きの寝室であったカメラ・ピクタに戻るならば,カメラ・ピクタが,アトリウムとの類比から「正義」と「信仰Jに関する君主の理念表明の場として解釈されうるものであったことは既に述べた通りである。明るい太陽光に満ちた青空の広がる円形開口部に棒を持つプットが二人いるのは,それぞれが王坊と王杖を表すからかも知れない。こうしたことを考慮すると,この君主の寝室が実際の寝室であったのみならず,一種象徴的な寝室「正義の床jであったとの理解も成り立つ。後世の太陽王ルイ14世とある種のレトリックの手法が重なるのも必然な部分がある。なぜ、ならルドヴイコもまた自らを太陽の王と見なしていたからである(注22)。さらにメダルに表されたルイ14世の「正義の床jが空位であることは重要で、ある。これは王は死すとも王権は死なないことと結び付いている。つまりここには,現世の肉体を持つ死す王ではなく,不朽の王権としての不死の王が表現されている。そうすると王座はむしろ空でなくてはならないだろう。前述のヴイトンの意匠の句は,不死鳥がルイ13世崩御直ちに飛期してすぐさまルイ14世のもとへ降り立ったことを唱っていたが,これは,王(ルイ13世)は死すとも王権(不死鳥)は死なず,すぐさま次の王へと受け継がれることを表明しているのである。〈カメラ・ピクタ〉では,王権の象徴と共にリングの上にいて君主と国家の結婚を約束する孔雀が,天光に照らされている。孔雀は,その肉は腐らないという伝承から,古来より不死の象徴であった。とするならば,r不死なる王」が,つまり一族に継承されてゆく「王権」こそが,そこに象徴されていると考えられるのである。つ中
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