に1主目しておきたい。と考えていいだろう。このように,各画題でその用い方や効果に多少の差異があるものの,工芸的技法あるいは,工芸的表現が用いられているということができる。続く共通性としては,各画題にみられる「連続性jを指摘しておきたい。いずれの画題についても,同じモチーフを連続させる傾向がみられる。「誰ケ袖図」においては衣桁に打ちかけられた小袖が繰り返される。ほぼ等価に扱われた小袖が繰り返されることで,中心モチーフである小袖がより強調されるという効果を生んで、いる。さらに,それぞれの衣裳にみられる文様も繰り返されることが多い。衣裳や衣桁にみられる連続文様は,1型jの使用によるものであることが多く,この画題の制作形態を考える際にも有益だが,ここでは特に小袖や小袖文様が繰り返し描かれているという点に特「武蔵野図jに描かれる草は,画面下部を帯状に埋め尽くすかのように繰り返し描かれる。さらに薄やほぼ等間隔に配される秋草も強い連続性を観る者に感じさせる。また,画面にとぎれることなく描かれる金雲も,観る者に横への広がりを想像させ,ある種の連続性を生みだしているといえるだろう。「キ卯橋水車図」にみられる連続性は,先述した「誰ケ袖図jや「武蔵野図jとは若干趣を異にしている。すでに竹内氏が「型jの反復と指摘し,11柳橋水車図」には,青海波のような波型を繰り返したり,柳の枝を奇妙に屈曲させたり,また蛇龍をあたかもキルテイングのように表すなど,筆致の初発性や一回性を意識的に廃し,一定の型を反復する傾向が著しいJと述べているように,1誰ケ袖図」のように小袖を繰り返すあるいは「武蔵野図jのように横への繋がりを暗示させるような連続性とは性格は異なるものの,1連続性」というキーワードで括ることができると考えて差し支えないだろう。ところで,ここにあげた画題以外にも,モチーフを連続させる例は多い。片輪車や雪輪あるいは扇などを蒔絵や染織品に文様として数多く連続させる例,多くの仏像をつくることで功徳をつもうという「数量的功徳主義J,また,室町時代に流行した「厩図jのように六曲扉風の一扇毎に一頭の馬を配するという画題もモテーフを連続させる方法をもちいている例として指摘し得る。「厩図」や「架鷹図」のように愛玩の対象でもあるモチーフを連続させる手法は,上記の画題のうち「誰ケ袖図jとの近さを思わせるため,今後蒔絵調度や染織遺品とのかかわりあるいは,1厩図J1架鷹図」の-298-
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