図JI柳橋水車図Jも染織,漆工をはじめとする工芸作品に多く造形化されていること注性が高く,和歌を造形化した小画面,そして近世初期に盛んに描かれるようになる大画面へという展開が指摘されている。本研究では,造形的共通性として金銀の使用,工芸的技法,連続性,人物不在という特色の共有を指摘したが,これらは,時代的趣向のみならず,和歌の造形化,そして小画面から大画面への展開という各画題の成立要因と無縁ではないように思われるのである。「誰ヶ袖図jや「武蔵野図JI柳橋水車図jといった近世初期に流行した画題は,造形面に着目した場合,意匠性に富むという点で共通していた。一方で,日本美術における装飾的様式の作品といった場合,まっさきに琳派とよばれる画家の名があげられるのが現状である。本研究では,琳派あるいは「誰ヶ袖図JI武蔵野図JI柳橋水車図j以外の意匠性に富む画題まで検討することがかなわなかったが,今後は,俵屋宗達,尾形光琳に代表される琳派の作家たちとその同時代の作品群を意匠性という概念で包括し,近世初期美術にひとつの指針を提示することを目指してゆきたい。また,琳派の活躍が絵画作品のみにとどまらず多岐にわたっており,また,I誰ヶ袖図JI武蔵野から,これらの工芸作品も考察の対象として,絵画に限定されない美術全体の様相を明らかにしてゆくことを次段階の目標としたい。このことは,平面的あるいは装飾的ということばで語られることの多い,日本美術全般の特質についての考察にもつながるものと思われる。『日本扉風絵集成9.1講談社1977年竹内(朝日)美砂子「柳橋水車図扉風の成立Jr美学美術史研究論集』第3号1984年名古屋大学文学部美学美術史研究室竹内美砂子「柳橋水車図扉風新出本の紹介をかねて一(上)(下)Jr園華J1138, 9号1990年玉晶敏子「宇治と黄金の橋扉風絵とくかざり〉をめぐってJr日本の美学.118 ぺりかん社1992年安達啓子「二種の柳橋図扉風Jr園華.11135号1989年(1)安達啓子「日月図扉風と武蔵野図扉風金剛寺本日月山水図扉風を中心に-J300
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