鹿島美術研究 年報第18号別冊(2001)
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100幅の内,個々の画幅が固有の名称や標号を持っていない事である。個々の画幅に表される主題がいかなるものであるのか,現在では,不詳のものが多い。やがては,全ての主題が解明されて,それぞれの主題に基づいた,一一之図,という呼称が,各幅に当てはめられる事であろう。しかし,ここでは,便宜的な手段として,各幅に番号をつけ,それと所蔵先を示す記号とを組み合わせ,個々の画幅を指し示す標号を設けたい。幸い,大徳寺本については,r中国絵画総合図録第四巻日本篇E寺院・個人.1(鈴木敬編,財団法人東京大学出版会,1983年)pp.14-22に,100幅全ての図版が掲載され,これに通し番号が付されている。これに倣い,東福寺本についても,『国宝・文化財大全I絵画(上巻).1(文化庁監修,毎日新聞社,1997年)pp.343-347 に掲載される図版に通し番号を付す事によって,個々の作品を指し示す為の便宜的な手段としたい。上記の二書は広く頒布されており,本研究の為の二次資料として活用するに益がある事と考える。また,東福寺には明兆筆五百羅漢図の下絵と称する作品が伝来し,所蔵されている。これは各174.5cm x 90. 5cm程の寸、法を持つ紙本白描画(一部淡彩)50幅である。この作品は,東福寺本の下絵と称される点に於いて,また,50幅揃った完本である点に於いて,東福寺本と大徳寺本との関係を考察する上で,有益な材料為りうる可能性を持っている。以下に,東福寺本・東福寺本下絵・大徳寺本,各幅の図柄について,その対応関係を示したものを表形式で掲出する。この表中に於ける表記方法の説明の中で,上述した標号について詳説する。-作品の所蔵先について,各所蔵機関名の英文表記の頭文字を採って,根津美術館所蔵分を記号N,東福寺所蔵分を記号Tで表した。347に掲載される,根津美術館本2幅・東福寺本45幅の図版について,所蔵先別に通し番号を付け,各幅の番号とした。番号は,③で触れる『中国絵画総合図録』を範とし,毎頁,各段内で右から左への}IJ買,さらに上・中・下段の順で,昇順に付した。-所蔵先記号と幅番号とを組み合わせ,個々の作品を識別する為の標号とした。② 東福寺本下絵に関し・下絵である事を記号sで表した。① 明兆筆五百羅漢図絹本着色画に関し-305 . r国宝・文化財大全1絵画(上巻).1(文化庁監修,毎日新聞社,1997年)pp.343

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