鹿島美術研究 年報第18号別冊(2001)
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325・326・327西日本文化協会1995年8月~1996年12月注とが理解された。いっぽう,肖像彫刻の作者も江戸時代後期には細工師,人形師といった職種によっても担われており,近世彫刻が伝統的な仏師のみの世界ではないことも明らかになった。江戸時代は前代に比してはるかに多くの仏像制作がおこなわれた時代である。これは江戸時代が極めて世俗化した時代であったことと密接に関係しているが,結果的にこのことが大量生産的で陳腐な仏像彫刻を多く生み出していく要因となったであろう。そのいっぽうで彫刻は置物や建築装飾あるいは根付等の細工物などの広い周辺領域をもっており,技巧においては極めて高い水準にあったことは確かで、ある。今後,この高い技術水準を生かしたさらに多くの肖像彫刻が知られ,等閑視されていた近世彫刻の一面が明らかにされることが望まれる。(1)展覧会図録『仏像を刻む一近世の祈りと造形-.1堺市博物館1997年張洋一「日本彫刻史における江戸時代の仏像彫刻Jr美術フォーラム21創刊号』醍醐書房1999年(2) 三山進「江戸時代の彫刻Jr江戸時代の美術』第5章有斐閣1984年(3) 毛利久『日本の美術10肖像彫刻』至文堂1967年(4)本像については『佐賀県立博物館・美術館報108.1(1995年)に詳しい紹介がある。(5) r武雄市史J武雄市史編纂委員会1972年(6) 川添昭二校訂『新訂黒田家譜』文献出版1984年(7) 清水善三・若杉準治『京都の肖像彫刻』財団法人京都府文化財保護基金1978年(8) 野口美造『宗像遺徳集J田島村1914年(9)土井郁雄「活人形について人形師松本喜三郎小伝J r西日本文化.1314・315・同小野則秋『野村望東尼伝』文友堂書庖1943年叫展覧会図録『福岡県の近代彫刻j福岡県文化会館1984年384

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