鹿島美術研究 年報第18号別冊(2001)
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(11)梅に鶏寄図〔図1-(11)J (12) 周茂叔愛蓮図〔図1-(12)J (2)(11), (5)(6), (7)(8), (4)(9)の6つの対から構成され,それぞれの対が向き合うように配同寒山拾得図〔図1-(lO)J 寒山の正面と拾得の側面とを重ね,ー鉢の像に見えるように描く奇抜な表現である。頭部を描くさらりとしたなめらかな線に対し,衣文には肥痩のある屈曲の多い線を用いている。落款印章は「守景書J,I久隅J(朱文長方印)C図1-(10)-2 J。白梅の右下から伸び上がる枝と,右上から下がる枝にそれぞれ緑の鶴喜子をー羽ずつ描く。二羽の鶴寄は枝の方向に合わせるように左下方に視線を遣る。落款印章は「守景書J,I久隅J(朱文長方印)C図1-(11)-2 J。蓮池のほとりで蓮華を持ち柳の幹に肘をおいて立つ周茂叔を描く。周茂叔を描くには肥痩の少ない滑らかな線が用いられている。落款印章は「守景書J,I久隅J(朱文長方印)C図1-(12)-2 J。以上,ごく簡単に図様を記した。落款印章は全て同じであるが,守景作品の多くに記される「守景筆」ではなく「守景書jという款記は珍しい。管見にして本扉風の他に筆者が知るのは,榊原悟氏の論文で紹介されているサントリー美術館蔵「山水図扉風」の「重山」印の捺された例のみである(注2)。書体をみると,12図の聞にもばらつきがあり,まとめて簡単に比較はできないが,概ねサントリー美術館の「山水図扉風」の款記よりは「景JI書Jの字が桔体に近く,若い印象を受ける。また,I久隅」印には少なくとも2種類が認められる。さらに画題毎にみてみると,(1)(3)(10)(12)の人物図では,帥を除いて5頭身ほどの丈の詰まった人物が特徴的でありまた中国故事人物を柔らかで滑らかな線と淡い彩色で描く(1泊礼衣文線に強い抑揚を付けた線を用いて道釈人物を描いた(3)(10)という2つの類に分けることができる。(2)(5)( 6)( 7)( 8 )(11)の花鳥図では,南方系の鳥を描く(2)(11),写実的な細密描写を用いた(5)(6),大和絵的な感覚で身近な鳥を描いた(7)(8)の3つの類に分けることができる。残る禽獣図(4)(9)は輪郭線を用いず,墨色主体に描く(4)と明瞭な輪郭と彩色を施す(9)の対比が明瞭である。このように見,落款の位置なども考慮に入れると,この扉風はもともと(1)(12),(3)(10), 置されていたように思われる。この扉風は少なくともl度は改装されており,その時に配置に祖師が生じたのではないだろうか(注3)。そして,そのような構成であっ-444-

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