も96.7x26. 4cmである。2 r鍾埴・登龍・樹鵜図J3幅対紙本墨画鍾埴図を中幅とし,登龍図を右,樹鵜図を左に配する3幅対で,画面寸法は各図と鍾埴は右手に剣を取って腰の後ろへ引き,左手は身体をかばうように前へ出す。顔と身体は正面に向くが,目は画面向かつて右斜め上をキッと見つめる。全体の輪郭を肥痩のある濃墨の線で勢いよく描き髭その他は淡墨で描いており,墨の濃淡が鍾埴の力強さと勢いを効果的に表している。落款印章は「守景筆J,I守景」朱文茄子形印〔図2-(1)ー2J。波逆巻く水中から龍が姿を現したところを描いている。龍の頭部は真正面から描かれ,3本指に掴まれた宝珠も正面に向けて突き出される。変わった構図である。落款印章は「守景筆J,I守景j朱文茄子形印〔図2-(2)-2 J。画面下から上に延びる古木の中程に留まり,背を丸めて下を見つめる鳴が描かれている。鴻の躯は濃淡の墨を重ねて立体感を表し,その表情はどことなくユーモラスである。樹の表現など,全体的に無造作という感が強い。落款印章は「守景筆J,I久隅J朱文長方印,1守景」朱文茄子形印〔図2-(3)-2 J。この作品の来歴は不明であるが,ご所蔵者のお話に依れば,明治20年代にはN家にあり,画題のとおり,お目出度い席には必ず懸けられていたということである。落款の書体は(1)(2)が同じ,茄子形印も(1)(2)が同じで,(3)は別印である。(3)の(1)(2)とは違う粗な感からしても,(1)(2)と(3)はもとは別にあったものであろう。画面左下に景物を集め,右と上部に大きな空間を取り,前景の土壌や樹木,遠山は墨の面を活かし,筆の動きを少なくして描いている。帰帆,落雁,煙寺を含んだ夕刻の景を探幽の作り上げた減筆体で描く滞酒な山水図であるが,画面中央部の右上にのびる面など,意味のよく判らない部分もある。款記は「守景筆」であるが,1守」のウ冠が明瞭でない。印章は「捧印」と読まれている印に似るが,1捧」の偏の形が異なっている。とりあえず「捧印J朱文方印〔図3-2Jとしておきたい。所蔵者は古美術商武生市N氏蔵(1)鍾撞図(図2-(l)J (2)登龍図〔図2-(2)J (3)樹鵜図〔図2-(3)J 3 r山水図J1幅絹本墨画94. 2x36. 6cm 武生市T氏蔵〔図3J -446-
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